Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
4月2日に起きた出来事をきっかけに、何か書き進めていこうと思います。
4月2日の今日は、三大童話作家のひとり、ハンス・クリスチャン・アンデルセン(1805-1875、デンマーク)の誕生日にちなんで、『国際子どもの本の日』なのだそう。本を通じて子どもの知的好奇心や想像力を広めることを目的とし、世界中の学校や図書館、コミュニティセンター等で読み聞かせやイベントが行われるとのことです。
ちなみに三大童話作家の他の二者はご存知の通り、イソップ(生年不明、古代ギリシャ?)とグリム兄弟(兄のヤーコプ・グリム 1785-1863と弟のウィルヘルム・グリム 1786-1859、ドイツ)です。
継母と義姉に虐げられる娘が一転王子と結婚するサクセス・ストーリーは、グリム版とシャルル・ペロー(1628-1703、フランス)版があります。グリム版のタイトルは『灰かぶり』で、ペロー版が誰もが知っているタイトルの『シンデレラ』。
この物語を題材にした数ある二次創作作品のひとつに、セルゲイ・プロコフィエフ(1891-1953、ロシア帝国)が作曲したバレエ《シンデレラ》(初演1945)があります。この作品は、プロコフィエフが第二次世界大戦中のソ連時代に作曲したもので、彼の円熟期作品の一つと言えるでしょう。彼の人生がとても興味深いのは、一度アメリカに亡命したにもかかわらず、様々な要因が重なり、ソ連に帰還したことです。しかし、帰国後はソ連政府の厳格な文化政策により、自由に作曲することができず、とてもフラストレーションを抱えた人生だったようです。
一方、同じロシアで生まれたイーゴリ・ストラヴィンスキー(1882–1971)は、1917年の十月革命による社会の混乱と政治の不安定さに危機感を抱き、断腸の思いで祖国を後にし、長い亡命生活を余儀なくされました。
その後、ヨーロッパ各地を転々としたのち、最終的にはアメリカに落ち着き生涯を終えます。彼らの旅路が逆方向であることは、非常に興味深いです。
そんなストラヴィンスキーの音楽と、思いがけず再会した出来事がありました。かつて今とは違う街に住んでいた頃、近所に小さな図書館があり、よく本だけでなく所蔵されているCDも眺めていました。ある日、いつものようにCDを見て回っていると、ふと目に留まったのが、ボロフスキー・アンサンブルによるストラヴィンスキー作曲の、バレエ・カンタータ《結婚》(1914–1923)でした。
その当時の私はストラヴィンスキーの作品からすっかり遠ざかり、聴くこともなくなっていました。ところが、なんとなくこのCDが気になり、借りてみることにしたのです。
《結婚》は、1914年の作曲開始から完成までに9年もの年月を要した作品です。上演のスケジュールがずれたり、または他の仕事に忙殺されたため、作曲は一時中断され暫く再開することができませんでした。この作品には面白いエピソードがあります。それはオーケストレーションを何度も改訂したことです。マストである合唱パートとの組み合わせに苦心したからでした。まずは編成の大きな管弦楽のために書き、次に自動ピアノとハルモニウム、2台のツィンバロム、そして打楽器群という組み合わせで試してみたりしました。最終的には、合唱と4台のピアノ、そして打楽器アンサンブルという、とても斬新な編成に落ち着きます。ロシア民謡風の本作は三大バレエ(『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』)後の作風の変化に戸惑っていた聴衆にも受け入れられました。ただし、先に述べたような事情で初演が遅れただけであり、実際にはこの作品が完成するより前に祖国を失ったストラヴィンスキーは、ロシアの伝統から縁を断っていました。
家に帰ってさっそくCDを聴いたところ、その内容の素晴らしさに感嘆しました。演奏の素晴らしさはもちろんのこと、残響が少なめなミックスのおかげで、声とピアノ(その他)の重なりが鮮明に聴こえる仕上がりだったからです。
私はかつて、作曲家で指揮者でもあるピエール・ブーレーズ(1925–2016、フランス)版の演奏を好んで聴いていました。彼の演奏は極めて精密で、一音一音が洗練された仕上がりでした。しかし、その洗練さゆえにこの作品が本来持つロシア的な要素 ---- 土着の温かみや田舎臭さ ---- が影を潜めているようにも感じられました。荒々しい声と乾いた楽器群の響きのコントラストこそが、この作品の醍醐味だと私は考えています。
作家シャルル・ペローが生まれた国、フランスの第五共和制の第2代大統領 ジョルジュ・ポンピドゥー(1911-1974、フランス)の没日は4月2日だそうです。彼の構想によってジョルジュ・ポンピドゥー国立芸術文化センターが建設され、その内部に設立されたIRCAMの所長をブーレーズが1991年まで務めました。この機関は作曲家と科学者が協力し、コンピュータ音楽や音響技術を研究する組織です。IRCAMの功績についてはひとまず脇に置くとして、この施設内には巨大な図書館があるそうで、とても人気のスポットだそうです。本を通じて多くの人々の知的好奇心や学識を深めていることでしょう。