Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
タイムラインを流れてくる映像を見ていたら、さんまに何かを言われてぽっちゃりした男の子が何やら泣いているようだった。誰だろうか、何を言われたのだろうか、そもそもこれは何の番組なのだろうかと思ったけど、あえて検索せず。最近は検索するとなんでもすぐわかってしまう。仕事などで必要なものはもちろんするけど、今知らなくても良さそうなものはいずれどこかで偶然に出会って知りたい。まあ出会わないかもしれないけど、そうだとしたら知らなくても良いことな気がしている。偶然知る時に、「ずっとなんだろうコレってうっすら思ってたけど……そうか、そうだったのか!」という感銘を受けている状態、ああ、そうだったのか〜としみじみするのが好きです。検索してすぐわかり、そしてすぐ忘れ、「前にも検索したことあるんだけど。検索をした事実しか覚えてない」と思いながら検索するのも悪くないです。
そもそも何を書いていたのか忘れかけてたので話を戻します。
そのぽっちゃりした男の子はその後、息子がつけっぱなしにしてたテレビに出ていた。キビキビと踊っている。歌も歌っているようだ。釣り人が着るようなポケットたくさんのベストを着ている。誰かしら? その後、何度も見るようになり、偶然知るのを待てなくなって検索したら、「こっちのけんと」さんだった。こっちの、ということはあっちのけんともいるのだろうか。どういう経緯で音楽をやることになったのか知りたい。記事を読み進めていると、菅田将暉の弟だと書いてあった。え、似てないね……と思った。そしてこの人は何万回もこれを言われて生きてきたんだろうなあとも思って、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
役者として才能にあふれ、歌まで得意なキラキラ兄貴がいる中で育つ。周りから似てるだの似てないだの言われる。うまく行っても行かなくてもお兄さんと比べられる。一般人だとしてもかなりキツい状況だと思う。ましてや自分が中学生の時に兄貴は仮面ライダーでデビューする。もっとダメな役ならともかくヒーロー役ですよ。つらい……。
学校でさぞ比べられてつらかったろうなあと思ったらやっぱりいじめられて、筆箱がゴミ箱に入れられたりしてたとのこと。泣けてきます。
3歳差というのも微妙で自分が進む道の目の前にいつでも兄貴がいるわけです。目の前がキラキラ輝いている。たぶんその兄貴は人間も出来ているであろう。俺はキラキラだけど、お前は何も出来ないね!なんて絶対言わない。余裕もある人はそんなこと人に言わないだろう。だから弟にもやさしく接する。優しくされればされるほど、兄貴はこんなに才能があり、人間も出来ているのに、自分はと思って自己評価が下がるのでは、など勝手に想像してしまった。もちろん、菅田将暉側だって、もともと才能があり、運もあり、かつものすごく努力を重ねて今の状態なんだと思うけれど、後ろを歩く者としたらたまらないだろう。前がキラキラな分、自分のところは薄暗いように思います。
けんとさんを知った時に思い出したのは、ホアキン・フェニックスのことだった。今はホアキン自身が確実に評価されている上に、早くに亡くなった兄のリヴァーを知らない世代も多いだろう。「ホアキンには俳優のお兄さんがいたんだけど、早くになくなったんだって」「へ〜そうなんだ」みたいな感じかもしれない。
1993年、当時人気絶頂にあったリヴァー・フェニックス(23歳)は開店したばかりのハリウッドにあるクラブ「ザ・ヴァイパー・ルーム」の入口で薬物の過剰摂取で倒れて亡くなった。(このクラブはジョニー・デップが所有していたと当時記憶していたけど、今回調べたら所有権の一部だった)そんなことから客筋はセレブレティばかりだっただろう。その時に同行していたのが19歳のホアキンで。そんな状況でキラキラ兄貴がいなくなってしまったら、すごく衝撃受けるだろうなと思った。生きている時ですら超えられない存在が亡くなってしまったら、亡くなった人はずっと良い時期を保っている。年も取らないし、ダメな仕事を残すこともない。周囲はますます美化してあがめる。生きていれば老けて汚くなってダサいこともしてしまうけれど、もうそういうことは絶対に起きない。私は別にファンではなかったが、カリスマの早すぎた死として大きく報道されたのを覚えている。
で、ホアキンなんですけど、初めて見た時に、「え?弟??」と思った。
存在を知ったのは遅く、「グラディエーター」で情緒不安定な皇帝役がとても合っていた。一度しか見たことがなく、歴史に疎いので、ウィキペディアからホアキンの演じた役についてコピペします。
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ルキウス・アウレリウス・コモドゥス(Lucius Aurelius Commodus)
マルクス・アウレリウスの共同皇帝(在位:177年 - 180年)、第17代ローマ皇帝(在位:180年 - 192年)。アウレリウス帝の嫡男で、策謀に長けた傲慢な野心家。賢帝たる父に屈折した感情を持ち、情緒不安定な部分がある。
自分よりも父から信頼されている旧友マキシマスに不安を覚え、父を殺した上でマキシマスを失脚させる。
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屈折して不安定、権力があるのにいつでも自己評価が低いコンプレックスのデパートのような人間だった。
インタビューで、とにかく偉大な兄、リヴァー・フェニックスと比べられるコンプレックスがつきまっている、と心情を吐露していたのを読んだ。あんな兄貴がいて、絶頂の時に亡くなる。クラブに一緒に行っていたということは亡くなる瞬間も立ち会っていただろうし、超えられない存在として刻み込まれちゃったことだろう。
ホアキンの話はここで終わります。
自分自身は第一子で弟がいる姉なのです。自分が育児をしていた頃に読んだブログにこんなことが書いてあった。
第一子の育児、両親ともに何もかもがはじめての経験である。不安が常に付きまとう。子の体調不良や成長の具合、行動、また教育についても余裕を持って対応することが出来ない。毎日が手さぐりであるから仕方がない。
また二番目以降の子の教育については、第一子の時の経験を生かして余裕を持って対応できる。例えば、子どもがちょっと転んだ、でもこのくらいなら大丈夫と冷静に判断したり。親が余裕を持って接するから子どももゆったりと育つことができる。親が冷静であるということは育てられる子どもにとってとても重要なことなのだと。
また、第二子は身近で兄や姉の言動を早くから見聞きして育つ。無意識のうちに学習することも多く、こういうことをすると親と揉めるんだなとか。人との付き合い方、距離感もうまく保つことが出来る。
きっとこれを書いた人は第一子なんだと思う。第一子の私はとにかく腑に落ちた。
自分はテストケース、プロトだったのか!と思えばあれもこれにも納得がいく。でもこの説で言うと、先に行けば行くほどバグが解消されて末っ子最強ということになる。そんな簡単な話じゃないですよね。
末っ子は可愛がられすぎてそれはそれで……という話もあるし、じゃあそもそも一人っ子はどうなんだ。上にお姉さんがたくさんいる末っ子長男の悲哀、そして襲いくる両親からの重圧、四姉妹でみんな美人なのに私は、長男ばっかり大事にされてさ!とか上下を姉と妹にはさまれた長男、また梨園の娘みたいに男だけが大事だから、娘には特に期待していない……とかいろいろありますよね。でもみんなその環境でなんとか折り合いをつけていくしかない。なんとか大人になってその後の人生を適度にいい感じにやっていくしかないなとよく思います。持っているカードは限られている。
けんとさん、ホアキンはキラキラ兄貴を持つ次男のつらさだけど、今は努力の末成功している。本当に良かったです。けんとさんは愛嬌があるからもっともっと幸せな状況になってほしいと思う。このあとも幸せが続きますように。
「裕次郎の兄です」という石原慎太郎のキラキラ弟へのコンプレックもあるらしい。どっちも成功してるじゃないかと思ったが、こんなに長男のオレは努力しているのに、ただそこにいるだけで愛嬌にあふれた次男坊が両親の愛をかっさらっていく。旧約聖書のカインとアベルのようです。慎太郎さんがどうだったのかはわからないけど、カインみたいなふるまいをしてエデンの東の方に追放されることもなく、その悔しさと悲しみをバネに東京都知事になったかどうかは知らないけど。
こういうコンプレックスは公言出来るくらいなら、もうだいぶ解消されてるのだと思う。本当にシャレにならないこじらせたソレはもう死んでも誰にも言えない。ずっとかかえて消化不良のまま死んでいくしかないのだと思います。
話は元にもどって、さんまは何を言ったのかというとこれでした。
ちょっとグッときました。