Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
Time Out誌でこんな記事が出た。
目黒区、学芸大学が世界のクールな街15位って、一体どういう基準で決めているのだろう?
Time Out 編集者のさじ加減次第なのではないだろうか?確かに、中目黒や代官山ほどの派手さはなく、地元感と、新旧の個人商店が同居している感じはいい塩梅の街ではあるのだが、景観美は無い。この雑多な景観が東京らしさといえるのかな?
さて、そんな学芸大学に三多摩地区から毎週通っているサイクリングルートを紹介します。
府中街道を走っていると、まず目につくのは府中刑務所。昔は壁画が描かれていたように記憶しているが、今は真っ白な壁が無表情に続く、日本最大級の刑務所。たまに、お出迎えの黒塗りの高級車が停まっている光景を目にすることも。
府中駅を超え、大國魂神社の脇を抜けると、左手には東京競馬場。中央高速高架下を通過し、右にはサントリーのビール工場。そう、松任谷由実の”中央フリーウェイ”の歌詞のあれです。僕の場合上り方面なので、左右逆ですが。
是政橋に出て、ここからは、羽村から羽田空港の手前まで続く、多摩川沿いのサイクリングコースで、二子玉川まで向かいます。富士山がよく見えますね。
すぐ左は競艇場。府中市は公営ギャンブルが全部あります。競輪場の京王閣を通りすぎ、京王相模原線の高架下を通過。
もう少し進むと、二ヶ領用水宿河原堰が見えてきます。元々、江戸初期に農業用水として作られ、この地域の稲作が飛躍的に発展しました。対岸によみうりランドの観覧車が見えます。
昭和初期までは、この一帯は豊かな田園風景が広がり、桃や梨の全国でも有数の産地だったそう。そんな風景を見てみたかった。調布花火大会の打ち上げは、この近くで行われます。
そしてこの辺りは1974年に起きた狛江市の多摩川水害の被災地。19戸が流されていく映像を微かに記憶しています。1976年に被災者が、国の河川管理に落ち度があったとして、裁判を起こし、’79年に東京地裁は国に対し賠償を命じますが、国は控訴。’87年に東京高裁は一審を破棄、逆転判決となりますが、もちろん住民側は上告。’90年に最高裁は、二審の差し戻し判決をし、’92年、実に災害発生から18年も経ってようやく住民側の勝訴となったということです。5年前の多摩川水害の記憶も新しく、多くの箇所で護岸工事が進められています。
国分寺市→府中市→調布市→狛江市まで来ました。昨年1月に起きた、狛江市強盗殺人事件現場の真横を通ります。事件直後、現場周辺が通行止めになり、住宅街へ回り道すると、刑事が聞き込みをする光景を目の当たりにしました。まさに現場になった家の前に備えてある自販機で飲み物を買ったり、被害に遭われた方もお見かけしたことがあったので、今でも通るたびに、心の中で合掌する日々です。
ここから世田谷区に入ります。右手にマエダオートという劇車用のレンタルをする会社の駐車場が見えてきます。戦前の車や、昭和40年代のパトカー、乗用車など、様々な名車が無造作に置かれていて、盗難とか大丈夫なのか?と心配になります。まあ、この駐車場の先は、警視庁白バイ訓練所だから治安は良いのか?東名高速の下をくぐり、駒澤大学の玉川キャンパスを通過するとまもなく二子玉川。ここまで約20キロ。是政橋から二子玉川駅下までは、一切、信号、交差点がなく、ほぼ坂もないので、快適なサイクリングを堪能出来ます。普段は左岸側(東京側)を通りますが、右岸側(神奈川側)を通るのも雰囲気が違って面白いです。
さて、ここからは一般道で、楽天本社脇から、駒沢通りに入り、学芸大を目指します。最初の難関が、環状八号線の上野毛 多摩美術大学までの登坂。多摩川からどのルートを通っても、必ずキツい坂を登らないと目黒区方面には入れません。電動アシスト自転車のお母さんが、僕の脇を涼しい顔で登って行きますが、最後の多摩美脇の急勾配は、車体の重いアシストママチャリは馬力不足なようで、最後は人力の僕がドヤ顔で抜き去ります。環八を超え、そのまま駒沢通りを直進し、日体大の脇を通過。この夏は、パリ五輪に出場した選手の名前が垂れ幕に列挙されていて、柔道の阿部兄妹をはじめ、48人!が出場していたという。
深沢不動、駒沢公園、柿の木坂を通過し、環七を渡って、学芸大学駅に到着。
移動中、映画 Civil Warで印象的に使われていた、SuicideとSilver Applesを骨伝導イヤホンで聴きながら来ましたが、Suicideが全曲で使用する'60年代のアメリカ産リズムマシーン”Seeburg Select-A-Rhythm 601B”のシシシシという音が秋の虫の様で本物の環境音と区別がつきません。
最後に、普段乗っている自転車は’90年のブリジストン トラヴェゾーンというモデルで、一時帰国の際に、手軽に乗れて収納可能な自転車が欲しくて、たまたま近所の自転車屋で中古で見つけ、もう15年以上乗っています。28インチのタイヤなのに、簡単に折りたたむ事が出来、”Cyclepedia: 90 Years of Modern Bicycle Design”という世界の250車種を紹介した本にも掲載されている隠れた名車です。