Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
レゲエとダブは好きだったのですが、「デラソウルがいいよ」と友人に勧められても(’89年当時)一向にピンと来ず、サンプラーの使い方だけを見ていた’90年代でした。劇的な転換が来たのは2002年にDAWのワークショップの講師としてベイルートとダマスカスに行った時で、生徒のワイール君のやっているAksserというユニットに直に触れることで、ヒップホップのリアリティと可能性に目を開かれました。
同時期に世界的にヒットしていたミッシー・エリオットの「Get Ur Freak On」をみんなで大音量で聴いたのも良い思い出です。
アラブ圏の人にとっては、この曲のリフは馴染みのある音階で出来ているのがプラス要素、私にとってはリズム形がクラーベでアフリカ音楽に近いのが好印象でした。
ワイール君は後のアラブの春の時期、マグレブ諸国をツアーして大活躍でしたが、ご存じのようにことごとく実らず、ラップはほぼ封印して現在は主にフランスでアーチストとして活動しています。2013年にはサックス奏者の仲野麻紀さんの尽力で来日し、私も美学校の生徒たちと共にコンサートに出かけ旧交を温めました。
ヒップホップ全般はすっかりエンターテインメントの構図にハマってしまって、たまにNo Nameが素敵だなあと思うくらいしか興味がなくなってしまったのですが、
(これは7年前、とてもフレッシュで感動したNPRコンサート)
最近「HIPHOP AFRICA」というガイド本を読んでいたら、知らなかった魅力的なアーチストがたくさん紹介されていて励まされました。群を抜いて良かったのがニジェールのMamaki Boysで、簡単なリズムマシンに地元の年配のミュージシャンの演奏をループで取り込み、「凄く速い」ラップを重ねたオリジナルなローファイ・サウンドが素晴らしいです。
雑な編集のPVも面白いのですが、1枚だけのアルバムが全曲良いので、ぜひ通して聴いてみてください。
日本語のヒップホップについては、昨年川原繁人さんの「言語学的ラップの世界」(東京書籍)が出て、見事にアートとしての理論的な整理ができました。自分が15歳だったなら、何の迷いもなくこの世界に飛び込んでいっただろうと思います。