Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
もうすぐ終わる2023年はよしながふみをじっくりと味わった一年だった。漫画、原作になったドラマ「きのう何食べた?」も「大奥」も両方面白かった。10年以上も前に友人の勧めで「何食べ」を2巻ほど読み、面白かったのだけど仕事や育児、その他の人生のあれこれに巻き込まれて続きを読む機会を失ったままだった。それがたまたま夜中のNHKで女が将軍になっているドラマを見、美男子が大勢集められている場所、大奥と呼ばれている…え?これが?とよくわからなくなった。大奥って、美人女子が集められて、将軍の後継を産むとかそういう場所だと思ってたけど、なんかまちがって覚えちゃってたのかな、歴史弱いから自信ないなあとますますよくわからなくなった。わからないまま、話が進む。映像の美しさと話の展開に惹きつけられて、そのまま見続けて気がついた。これはよしながふみの「大奥」というものではないか。漫画もドラマも話題になってたのに、話の筋をちゃんと知らないままだった。偶然ドラマを見ていなかったら、漫画を読むきっかけも逸していたと思うと、恐ろしい。多分こういう何度も読みたくなる漫画はもっとたくさんあるんだろうけど、自分の方のタイミングが合わないと読み続けることができない。漫画の面白さは変わらずでも、自分に受け止める余力がないともう逃してしまう。漫画に限らず小説も映画もそうだ。元気な時は、「渋谷にいる3時間で見られる映画はないか」と探して走ってジャンル問わずに映画館に飛び込んだり出来るけれど、最近は瞬発力が足りないなと思うことが多い。
ドラマ「大奥」が面白く、ネットで少し検索して漫画の方もものすごく面白そうだと思った私はそのままの勢いで電子書籍を買った。これが時間が出来たら本屋に行こうと思ったり、通販で購入してすぐ届いたとしてもダメだったかもしれない。ドラマで偶然出会った瞬発力は少し薄れてしまって、日々の雑事に追われて読み始められなかったかもしれない。夜中でも思い立った時に購入できる電子書籍がこんなにありがたいと思ったことはない。休みの前日、ドラマでキッカケをつかみ、漫画に手を伸ばすことになった。若い頃から漫画は好きだったが、育児の大変さに色々な楽しみから遠ざかっていた。育児の大変さ、と書いたけれど子どもはもう高校生である。いつまで育児の大変さが原因で、と言っているのだと我ながら呆れるけれど、色々な楽しみから離れているうちについて行かれなくなり、遠い存在になってしまった。自分はこうやって、昔好きだった漫画を繰り返し読むだけになっていくのだな、寂しいものだ、知らない漫画を読みたい、読んだことのない先生の作品に触れたいと思っていたけれど、なかなか手が出ずにいた。
自分の周りにあるだろう面白いもの、面白くないものも含めて色々なものと自分の間にへだたりが出来た。たらこの薄い皮のような膜、と言えば良いのだろうか。膜は薄いのでぼんやりと透けては見える。でもはっきりとは見えない。リアルさがない。へだたりを感じて、手を伸ばし損ねる。育児ノイローゼからは脱したつもりだけど、この後遺症は大きかった。自分で色々本屋に行ったりネットで試し読みをしてもピンとくるものがない。自分に受け入れる力がない。見つけられない。
今回、ドラマというきっかけがあり、また同じ時期に子どもの同級生で漫画が好きな女子がいて、その子と話す機会を持てたことはとてもよかった。子どもの同級生と話す機会もそうそうないけど偶然話す機会が降ってきた。現役の高校生はエネルギーがあるので、新しい作品をどんどん読む。面白いものをたくさん知っている。その子と漫画「大奥」の話を出来たのが良かった。若手の漫画家さんで面白いものある?と訊くと他の先生の作品もたくさん貸してくれた。
自分が高校生の時、漫画の話ができる同級生はとても少なかった。一学年に300人近く生徒がいるのだから、平口広美の話は出来る友だちは見つからなかったかもしれないが、「松苗あけみ」「吉田秋生」の話が出来る人はいたと思う。でも同級生だとしても、お互いの趣味まではわからず、あまり漫画の話をした記憶がない。今はLINEやツイッター(高校生はやってないのかな)で趣味の合う友だちが見つかる機会が多くとてもうらやましい。学校の友だちにそういう話が出来る人がいなくても、実際会ったことがない人とやり取りが出来る。いろいろ詳しい人から教えてもらったり、逆に自分が好きなものをおすすめしたり。自分が勧めたものを相手が「面白いね!」と気に入ってくれたら、とてもうれしいだろう。いつか会って話す機会が持てたらますます楽しいだろうと思う。SNSでは良くない方の話、遠く離れた人と知り合って、事件に発展してしまったりの話をよくニュースなどで耳にする。良い方の話は事件に発展しないので、取り上げられることが少ないように思う。自分は今のところ事件に発展することもなく、趣味が合う友だちが増えた。あんまり会う機会がない友だちもいるけれど、お互いのペースで付き合うことができるのはうれしい。電話で話す時間はなかなか持てないけど、時間差でツイートへの返信が出来るのはありがたい。まあ今、電話はする人少ないですよね。
よくないことも多い最近だけど、こういうことに関してはとても良い時代になった。子どものお弁当作りは毎日で、自分にはちょっと大変だけど、「何食べ」に出てくるレシピを見ながら、今度これ作ってみようと思ったりしている。レシピがとてもシンプルで良い。特殊なスパイスとか出てこないし、「これがなかったら、なくてもいい」と書いてある。ざっくりしたところがとっつきやすく、とりあえず作ってみようと思える。昔、雑誌「モーニング」を読んでいた頃に「クッキングパパ」を読みながら料理をしていたことを思い出す。あの頃から電子書籍になり、iPadに全巻入っているのでもっと身近になった。なんとなく気後れして、作ったことがない料理も漫画のエピソードに引っ張られるようにしてやってみようかなと思えるようになった。
まず、2024年は揚げ物に対する苦手意識を克服したい。「何食べ」に出てくる野菜の天ぷらを作ってみたらどうだろう。「てんや」で毎年の春に食べるふきのとうの天ぷらなど、自分の家で作れたら楽しいんじゃないか。揚げたてが食べられるし、と書いていて、「てんや」でも揚げたてを食べられることに気がついた。プロが揚げる天ぷらの方がサクサクで値段も手頃だし、ガスコンロがベタベタになるのもなあ……。と、早くも苦手な気持ちがやる気を上回ってきてしまった。まあ、天ぷらじゃなくても、簡単そうなコールスローや鶏肉の香草焼きとか作れそうなものから作ってみたいと思います。
写真 チキンカツ
鶏の胸肉を使って。
衣の付け方も簡単だった。小さく切ってから揚げると火の通りの心配も少なく、お弁当にも入れやすくて良かった。