Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
10月1日に京都文化博物館で行われる京都在住のデュオ mama! milkのコンサートに出演するために、早朝の新幹線こだまの車中でこれを書いている。なぜ、こだま? ご存じの方も多いと思うが、EXこだまグリーン早得3という、3日前までに買えば、のぞみの自由席より安いチケットがあり度々利用している。のぞみなら2時間10分のところを各停なので、3時間36分もかかるから、好んで乗る人は少ないかもしれない。が、座席の広いグリーン車で、ちょっと作業したり、休むにはちょうど良い時間だと思う。通勤ラッシュの中央線を避け(とはいえ、5時台の中央線で座れませんでしたけどね)東京駅まで移動し、のんびり京都に向かい、10時半頃到着なのが良い。と、行き当たりばったりで書き始めたが、さて、何の話を書こうか?折角なので、今回もコンサートでお世話になる、もう20年近い付き合いの、コントラバスの清水恒輔とアコーディオンの生駒祐子のデュオ、mama! milkの事を書き留めておきたいと思う。コントラバスとアコーディオンのみで、多くの場合、PAも使わずアコースティックのみで、会場も普段はライブでは使わないような場所を好んで選び、国内外、様々なところで演奏を重ねてきた彼らとの出会いはいつだったかな?と思い返してみると、彼らが所属していたRaft MusicというレーベルのレーベルメイトであるAcoustic Dub Messengersのオリジナルとリミックスを合わせた2枚組CDを2003年にイタリア盤で出し、2004年の夏、渋谷で、さかなのトリビュート・アルバム『SONGS OF SAKANA~いろんな場所に君を連れていきたい』の発売記念パーティーがあり、その時に初めてmama! milkを生で聴いた。オルゴールとベースのみの演奏で観客はあっけにとられたが、その立ち振舞がすごく印象的だった。その後、ヨーロッパにライブに来るということで、イタリアではミラノ郊外の元教会だったクラブでのライブをオーガナイズしたことはなんとなく覚えているが、ライブ当日以外のことはもうあまり記憶にない。この時に、2005年に出した僕の”informed consent”というアルバムのゲストでミラノでの録音に参加してもらったり、第1回の東京デザインタイドや、京都にあったフローイング烏丸のオープニングで一緒にライブしたり、このあたりからコラボレーションが始まり、帰国の際は、それまで殆ど縁のなかった京都に毎回行くようになった。翌年には京都のセレクトショップSferaの店舗用に制作したfurniture musicシリーズの2枚目を京都の法然院で録音したり、逆に法然院での彼らのライブやアルバム”Fragrance of note”にテルミンで参加。その時のレコーディングメンバーは、m!mの他に、ピアノのトオヤマタケオさん、フルート、トロンボーンの井登友一さん、ドラムの栗原務さんと一緒に、アナログテープに一発録音。ブースも分けずに、中央にマイクを立てて、せーので一発なので、失敗は許されない、というか失敗がそのまま録音されてしまう緊張度の高いセッションだった。その後、金沢でこのメンバーでライブをしたり、大阪の綿業会館、東京青山のHaden booksとDee’s Hall、ミラノのスフォルツェスコ城など、様々な場所で、細々と、しかし濃密な時間を過ごしてきた。共演する度に思うのは、制作への直向きさと、妥協のない姿勢。アーティストの一方的なエゴではなく、今回は何を一緒にやりたいのかが明確で説得力があるので、一緒にやっていてストレスがない。
コロナ禍でもリモートで、井登さんのフルートと僕とm!m4人で、リアルタイムセッションをして、音は各自録音し、それをmixしたsotto voceという素敵な曲が昨年発売された”Charade”というアルバムに収められている。このジャケットの撮影は、長年の友人である写真家、在本彌生さんだったり、彼らの紹介で知り合ったサウンドアーティストのニシジマアツシさんを通して、新たな人脈が拡がり、昨年書いたJohn Cageイベントを筆頭に、様々なジャンルの友人が出来た。
そういうノリは、東京よりも、ミラノでの友好関係と似ているかもしれない。京都に来ていつも思うのは、街の規模が丁度良い感じ。そこがミラノと少し似ている。東京で、親しい友人に会おうと思っても、よほど家が近くない限り、きちんとアポとってじゃないとなかなか会えないが、京都だと、今〇〇に居るんだけど来ない?で、30分後には集まっちゃったり、そういうイージーさと、皆、しっかり自己主張があり、自己責任で行動していて、良くも悪くもプライドが高い感じが僕には性に合うのだと思います。住んでみたいなとちょっと思うが、たまに通うくらいがちょうどいいのかもしれない。
ミラノ、スフォルツェスコ城での記念撮影。
以下、テルミンで参加したmama! milkのアルバムとシングル。
アナログ盤もあります。
Fragrance of tones (2008)
DLP/CD
Vanilla (2015)
7インチシングル
Charade (2021)
DLP/CD