Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
先月、コロナ渦によってしばらく行われていなかった新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会が4年ぶりに開催されました。
新宿三井ビルディング会社対抗のど自慢大会とは、新宿三井ビルに入居中のテナント企業だけが参加できる親睦を目的としたカラオケ大会のことです。新宿三井ビルが竣工した直後に第1回大会が開催され、今年で46回目。あくまでカラオケ大会であるという体裁をとってはいますが、実際の開催規模はそれに見合わないほど大きく、新宿三井ビル下の広場に特設ステージを設置して、3日間に渡り大々的に行われます。また、この大会でもっとも特筆すべきは出演者の皆さんが見せる圧倒的な熱意。決勝ともなると、カラオケ大会とはとても思えないような熱いパフォーマンスが繰り広げられ、もはや「都会の夏フェス」と表現しても差支えがないほどの盛り上がりを見せます。近年は噂を聞きつけた三井ビル関係者以外の人々も会場に駆けつけるようになり、毎年1000人に迫る数の観客をコンスタントに動員。一般的な認知度も上昇しており、現在もっとも注目すべき音楽イベントとして各所で話題になっているのです。
…と、やや勢い余った感じで概要を説明しましたが、かなりざっくりとしたものなので、詳しくは こちらのニュース動画 や こちらの記事 を参照して下さい。また、出演者のパフォーマンスについては、YouTubeで検索をするか、X(旧Twitter)で「#三井ビルのど自慢」のハッシュタグを追うとその様子をうかがうことができます。
さて、この新宿三井ビルのど自慢大会、自分自身の気持ちを結論から言うと、わたしは本当にこれが大好きで。この大会で行われていることを一言で表現するならば「日本で一番レベルが高い余興芸」となるのですが、しかし、出演者の皆さんの強烈なモチベーションによって磨かれた演目のクオリティーと、反面、その中に垣間見える「祭りごとを全力でエンジョイしたい」というピュアな気持ちが高純度でフュージョンした結果、ひたすら楽しさしかない空間が奇跡的に出来上がっており、観ているだけでとても言葉では言い表せない不思議な多幸感に満たされます。おそらく、承認欲求や上昇志向、焦燥感などから解き放たれたプリミティブな音楽の姿がわたしにそれをもたらしているのだろうとは思うのですが、それは同時に、職業作曲家がいつの間にかどこかへ置き忘れてきてしまった"何か"を見せつけられているようでもあり、ステージの様子を眺めながら言いようのないエモーションにかられ、思わずビールを何杯も飲んでしまいます。切なさと多幸感とビール、最高です。
わたしが新宿三井ビルのど自慢大会を現地で観ることができたのは2018年の第44回大会が最後。復活した今年は観に行くことが叶いませんでしたが、来年こそはなんとかして観に行きたい。西新宿のビルの谷間で切なさと多幸感とビールを浴びたい。最悪、発泡酒でもいい。そう思っています。