Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
この度、2009年より13年ほど続けてまいりました「clockmusic」の配信を終了することにいたしましたことを、ご報告申し上げます。
「clockmusic」とは、曲の長さが1万年になるようにプログラミングされたミニマルミュージックの作品です。
デジタル時計のもつミニマリスティックでポリリズム的でもあり、常に変化し続けるという性質をそのまま利用し、日付を含めたデジタル時計の数字の変化に対応してフレーズが変化するようにプログラミングすることによって、0001年01月01日00時00分00秒からスタートし、9999年12月31日23時59分59秒になるまで、複数のミニマルなフレーズがポリリズム的に絡み合い、曲がわずかながら常に変化し続けます。それまでに発表したミニマルミュージック的な作品としては2002年に英Pussyfootよりリリースされた「honolulu」というアルバムもありましたが、この配信を始めようと思ったより直接的なきっかけは「圧縮新聞」というwebサイトでした。
「圧縮新聞」のwebサイトはもうなくなってしまっているようですが、web上のニュースサイトから複数の最新ニュースを読み込み、マルコフ連鎖という方法を使って圧縮した荒唐無稽なニュースを自動生成させるというものでした。WEB上にある情報を読み込みリアルタイムで自動生成させるということに興味を持ち、応用すれば気温や降雨量等の数値化された気象データなどをリアルタイムで反映させブラウザ上で自動生成される音楽が作れると思い、調べたところAdobe Flash Playerを使えば実現できそうである事がわかり、その試作として作ったのがこの「clockmusic」でした。
それまで、コンピューターのプログラミング言語には全く縁がなく、制作はFlashで使用されるプログラミング言語ActionScriptを学びながらプログラミングを進め、プログラム上で試行錯誤しながら作曲を進めていきました。音源にはアコースティック的な響きを再現でき、細かく音色が調整できる物理モデル音源を採用しました。
プログラムは比較的単純で、例えば1秒の位の数字には10秒で繰り返す主旋律とも言えるメロディーが対応していて、10秒の位の数字にはその数が増えるにつれ音数が増える伴奏のようなフレーズが対応し60秒で繰り返しています。曲と時計が対応していることをわかりやすくするため、音が出るタイミングで対応した時計の数字が光るようにし、眺めながら音を聴いていれば何となく仕組みが掴めてくるようにしました。基本的に数字が0の時には音が出ないようになっているため、時刻が00:00:00の時に一番音数が少なく、23:59:59からの切り替わりが1日の中で1番ダイナミックな瞬間ということになります。
「clockmusic」を公開した後、当初のアイデアであった気象情報などを反映させた作品も作ろうと思ったのですが、web上で思うような情報が収集できなかったり、作成中にデータのソース元となる気象情報サイトの仕様が変わったりと、色々と思うようにいかず頓挫してしまいました。
「clockmusic」は公開以降人知れず配信を続けていたのですが、セキュリティの問題が指摘され続けていたFlash Playerのサポートをその提供元であるAdobeが終了したことに伴いブラウザ上で再生できなくなってしまい、使用していたサーバーについて他に解決したい問題もあったため、この度サイトを閉鎖することにいたしました。
この作品の制作意図のひとつに、エンドレスで延々と聴き続けられるミニマルミュージックを作りたいという事があったのですが、1万年の時を待たず、思わぬ形で終了することになってしまいました。残念な気持ちもありますが、ファイル形式を変換する方法などもあるようですので、またいつか別の形で公開できたらいいなと思っています。
興味を持っていただいた方に
DL版「clockmusic」(swf形式, 約3.5MB)
*クリックでダウンロードが始まります
https://www.toyromusic.com/kuni/clockmusicMASTER.zip
swf形式のファイルを再生できるサイト(少しタイミングがルーズなようです。)
https://ruffle.rs/demo/
コラム執筆中に見つけたこちらのサイトにもアップロードしました。
https://flashlover.jp/detail.html?id=889