Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
小さな頃から映画音楽が好きで、「素晴らしい風船旅行」とか「ライアンの娘」とか「Z」のメインタイトルとか「アルジェの戦い」とか、好きだった曲をあげるとキリがないです。ロックに目覚める前、中1の時には小遣いとかお年玉とかを貯めてキングレコードの映画音楽大全集(LP5枚組)を買ったのでした。期待して聴き始めたら、オリジナルサウンドトラックはどれも面白いのに、日本のストリング楽団でカバーした曲は雰囲気がなくてがっかりした覚えがあります。「鉄道員」のオリジナルサウンドトラックとか、ノイズまみれで映画館にいるみたい。悲しいメロディの終盤に、サイレンとか少年の叫び声とかが入るのにワクワクしました。
大学生の時には、京都に京一会館と祇園会館という名画座があって、特に夏場の蒸し暑い時期には手軽な避暑対策として入り浸りでした。京一会館は、学割で安いし3本立てや4本立が普通で、長居しすぎて冷え切り、王将で食事、銭湯で温まって叡電に乗って帰宅という、今から考えると夢のような素晴らしい生活でした。「ブレードランナー」は祇園会館で見たような気がするのだけど公開が'82年なので、もう西宮に引っ越していて、記憶が捏造されています。
'73年に製作された「ミツバチのささやき」は、日本公開は12年後の'85年、六本木のシネ・ヴィヴァンで見たらとても良くて感激しました。その後レンタルビデオで借りてきて音だけをDATにコピー、100分くらいあるのだけど、よく部屋で流していました。DATは長時間録音できるので最初から最後まで途切れないのがよかったです。
'03年製作の「エレファント」は、数年後に早稲田松竹のガス・ヴァン・サント特集で見たのだと思いますが、これは内容もショッキングなんだけど、音にびっくりしました。カメラ部の男子が高校の廊下を歩くシーンで、監督の好きなAcid Mothers Templeの音楽が充てられているのですが、音量が小さくて廊下の現実音に混じって、高校の何処かの部屋でバンド練習しているのが音漏れしているように聴こえる。超アンダースコアというか、ドキュメンタリーとフィクションがサブリミナルなところまで行っている。この映画は、カメラワークも素晴らしくて、見た後に辛くなるに決まっているのに、つい繰り返して見てしまいます。
このひと月くらい、ジャン=ピエール・メルヴィルをまとめて観ているのですが、音楽の使い方が乱暴でかっこいいです。後期のものは極端に音やセリフが少ないのに加え、音楽が流れたと思ったら乱暴にカットアウトされたりしていて凄味あり。逆に、56年の「賭博師ボブ」は音楽の量がむやみに多い。夜のモンマルトルを若い賭博師が徘徊するシーンでは、いろいろな店で流れているであろうジャズ、ラテンなどの音楽がたくさん雑に繋がれていて、迫力あります。ちなみに「リスボン特急」では、刑事のアラン・ドロン が軽くジャズピアノを三角関係のカトリーヌ・ドヌーヴに聴かせるシーンがあるのだけれど、カメラは大胆にもアラン・ドロンの手元を映していて、かっこいいのかダサいのかよくわからない(ギャグのつもりでは撮っていないと思うのだけど)。「サムライ」、「仁義」、「リスボン特急」のドロン3部作は内容が「?」>「??」>「???」と変化していて、「仁義」は共演のイヴ・モンタンの色気、「リスボン特急」は強盗シーンのミニチュア撮影がサンダーバードのようで見ものです。リノ・ヴァンチュラ主演の「ギャング」と「影の軍隊」は大傑作だと思うけれど・・・と、映画音楽の話ではなくなったので、この辺りで失礼します。