Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
横川: 松前くんといえばシンセ!
松前: そうですね。やはり、音楽を本格的にやろうって思う様になったのは、中学時代、プログレとかシンセサイザーを使った音楽と出会ってからでしょうか。そこからのめりこんで行ったので。
横川: シンセといえば宇宙だよね!
松前: 笑。もう単純に、LFOがかかった音とか、楽器というより、効果音として使っていたもので、宇宙感を強く持つ様になって、自分でシンセを手に入れてからも、何かの楽器のシミュレートより、SEっぽいサウンドを作る事がとにかく楽しくて。
横川さんはいかがでしたか?
横川: 聴いていたのは、EL&Pとかのプログレと冨田勲、フュージョンではWeather Reportのジョー・ザヴィヌルだけが別格で、Arp2600を使った変な音に痺れていた。ロックとかフュージョンをやってたせいでKorg800DVとかRolandのSH-5、少しあとでJupitar-4とかSystem-100をいじってたけど、夢中になったのは4-Dで小西くんのMono-PolyとかPoly6を使ってなんとかProhet5みたいな音を作ろうとし始めてから。DX-7の音作りで挫折して、サンプラーで元気になった。
松前: 当時、富田勲さんの「惑星」を聴いて、オーケストラシミュレートと宇宙的なサウンドがバランスよく混ざっていて、今考えると一番宇宙っぽいシンセですよね。Jupiter-4は、大阪、梅田の大阪駅前第二ビルのローランドのショールームで初めていじって、ポリフォニックで大感動した記憶がありますね。僕はちょうど大学生になってすぐぐらいにDX-7が出て、アルバイトでシンセ買おうと思っていた頃で、、。楽器屋でCS80の最後のストックが35万、DX-7が一切割り引きなしで24万8000円で、、笑。どっち買うか悩んだんですが、車もないし、さすがにCS80持ち運べないので、バンド活動するにはやはりDX-7って事で手に入れました、、、。幸いFM音源勉強したおかげで、その後、いろいろ仕事には結びついて良かったんですが、ビンテージシンセの観点だと、CS80も惜しかったなあ~、って思います。
今考えると、クラウスシュルツェやタンジェリンドリームは多少宇宙っぽかったけど、クラスターやノイは、別に宇宙っぽい事やろうとしてたワケじゃないんだろうけど、当時、テイチクから発売されていたジャーマンロックがとにかく宇宙系の邦題なんですよねえ。
「宇宙絵画」、「宇宙讃歌」、「銀河遊泳」とか!笑
ジャケットもイイじゃないですか。それで、「どんな音なんだろ~?」ってワクワクして。シュルツェの70年代の作品は今でもすぐに宇宙旅行出来る気分で、たまに聴いたりしています。
横川: クラスター、ノイ、イーノは影響大きいなあ。一番聴いたのはZero-Setで、これは今でもよく聴く。宇宙じゃないな、これはニューウェーブとかエレクトリックファンクだと思う。
松前: クラスター&イーノとかも素晴らしいですよね。Zero-Setも大好きです。いまだに新鮮ですね。Moebius,Plankもカッコよかったなあ、、、。
横川: 松前くんのシュルツェものはとてもいいので、2代目を名乗ってもいいんじゃないかしら。
松前: 笑。ありがとうございます。いやいや、でもシュルツェはシーケンスの扱い方がやっぱりすごいですよ。今考えてもあの当時の機材で、どうやってるんだろう?って思う事がたくさんあって勉強になります。
横川: 今回の曲で、使ったのはMS-20がメインなのかしら?
松前: 普段は作品作りではMS-20が多いんですが、今回はイントロのシンセ、あとメロディの一部で使っていますが、そこまでMS-20は多くなくて、ほとんどはソフトウェア音源で作りました。
横川: おお、それはびっくり。音が太いので、てっきり実機だろうと思ってました。やっぱり、音色作りとか使い方が上手いんだわ。
松前: そうですかね、、。気持ちいい音選んだり、作ったりしてるだけなんですが、サンプラー音源でオーケストラ系のシミュレートとか今ではすごいレベルになってますが、やっぱり僕はシンセサイザーで音楽を作りたいって思います。ドラムもPCMより、シンセドラムの音が好きだったり、、。
横川: 宇宙モノの映画だと、「ブレードランナー 」とか「2001年宇宙の旅」とか「スター・トレック」が最高かなあ? 「惑星ソラリス」はどうかしら?
松前: 映画はそこまで思い入れなかったんです。そんなに映画館にも行かなかったし、映画はマカロニウェスタンが好きすぎて、SF映画まで手がまわらず、随分後になってから観ました。 あと当時だとテレビドラマで「謎の円盤UFO」が好きでしたね。横川さんはいかがでしたか?
横川: 謎の円盤UFO」は、ムーンベースの女性隊員のコスチュームにドキドキしたなあ。ちなみに、ゲイ・エリス中尉役のガブリエル・ドレイクさんは、ブリティッシュ・フォークの至宝、ニック・ドレイク(「リバーマン」が素晴らしい)のお姉さんです。私は、「サンダーバード」に夢中すぎて、自分の部屋を秘密基地にして人形劇をやってた(小学生)重症患者だったんだけど、「キャプテン・スカーレット」で7頭身になったところで冷めた。
松前: 笑。そうそう。ちょっとあの服はドキドキしますよね。「謎の円盤UFO」は、日本版のオープニングが無茶苦茶カッコよかったですよね。
「1980年、既に人類は、、、」のナレーション、必死で覚えてましたよ。笑
音楽もむちゃくちゃカッコよかった。
横川: 映画の「ブレードランナー」で再び特撮が好きになったのですが(以下、長くなるので割愛)。映画は、映画音楽が好きすぎて、エンニオ・モリコーネの変わった曲(「アルジェの戦い」とか)にはすごく影響されたなあ。ギリシャのミキス・テオドラキス(「その男ゾルバ」とか「Z」とか)も大好き(以下、長くなるので割愛)
松前: エンニオ・モリコーネは僕はマカロニウェスタンでものすごく好きでした。あまりに有名になってしまったけど「ニューシネマパラダイス」はやっぱり圧倒的に心揺らされます。 映画をテレビで観て、音楽にのめりこんだのだと、デイブグルーシンの「レーサー」の2曲とか、バートバカラック(ハーブアルパート&ティファナブラス)の「007カジノロワイヤル」(パロディの方)とか、一聴しただけで好きになってしまいました。
横川: あ、普通にカッコいい曲。松前くん、良い音楽は好きだし作る曲も幅広いものね。
松前: NHKの音楽とか、MS-20使った、メロディやコードがちょっとバカげてたり、変だったり、ずっこけた様な音楽も好きで、自分らしいと思っているんですが、一方で、真逆の、、笑、、、宇宙っぽいダークなものも自分らしいって思ったり、、。
今回の「COSMIC LATTE」は、ちょうど両方がうまく混ぜ合わせられた作品になったかな?と思います。
横川: 宇宙モノで、ぜひ作品作りたいですよね。
松前: 今回の曲、リズムのある部分を宇宙効果音的なサウンドで挟んでありますが、こういった効果音の為に、普段からかなり大量に、シンセの演奏、録り貯めてあるんです。シンセいじりながら即興演奏を。それをあとでひっぱりだしてきて、ミックスするんです。
なので、今度、永遠に宇宙空間的な音だけで、アルバム10枚組ぐらい作ってもいいかな?とか思いますね。
、、って、実際は宇宙ってこんな音してないと思いますけどね。
そういう展開なら、YOUTUBEでやってもいいかもしれないし、配信だけにしても良いかもしれませんね。
横川: 長岡秀星さんが健在だったら、ぜひプレゼンして個展とか画集で宇宙アートの共同作業ができるとよかったなあ。今製作中だろう「デューン」の後半は、きっとハンス・ズィマーにがっちり掴まれてるだろろうし・・・。
松前: ははは。。いやいや、そんな大きな仕事は無理でしょうけど。宇宙系の音楽、、例えばNHKスペシャルみたいな宇宙系のドキュメントとか、おもしろそうですよね。これからも楽しく宇宙空間の様な音楽、作り続けたいです!
横川: 永田くんはギターミュージックが似合うと思ってるんだけど、リゾート感のある曲になったのは、コロナのせい?
永田: 今回自分の作品となった時に、まず自分の声を使った何かを作ろうということだけは最初に決めたんですね。popsのフィールドで声の多重録音的なことをやろうと。今までクライアントワークでは自分で歌ったものをそのまま納品というのは幾つかあったんですけどクライアントワークとは別の、バンド活動とか所謂アーチスト活動と言われるものの中でそれはやっていない事だったので。ここでひとつやっておきたいなと。
確かに自分が曲を作るとき、まず手に取る楽器はギターというケースは多くて曲も所謂ギターものは得意と言えば得意なんですけど、自分の聴いているものやルーツは必ずしもそういうものだけでも無いので特にギターミュージックかどうかというのは意識していなかったです。
横川: なるほど、確かにこの「トイロのココロ」で年間ベストに挙げてもらってる「永田くんがよく聴いた曲」たちが面白いし、内容にかなり幅がある。永田くん自身の作る曲も簡単にギターミュージックと括れないなあ。歌もの、もっと聴きたいね。
永田: 好んで聴く音楽はいろんなタイプの曲があって、『聴いてる部分』がそれぞれ違うっていうだけなんだけど脈絡無いっちゃ無いのかな?好みは自分なりにはかなり系統だっているんですけど。
歌ものに関して言うと、歌手の方を立てるならともかくやっぱり自分で歌うってなると自分の歌唱力の限界も判っちゃってるので笑、かなりやることが限られるんですよね。なので探り探り出来ることをやっていく感じです。
今回の曲、自分の意識としては特にコロナのせいという訳では無いですが、あんまりアッパーな気持ちにはならない状況ではあったと思うし、実際好んで聴いている音もそういう感じでした。なので見方によったらこういう曲になったという事にコロナに遠因があるかないかは微妙なので、何らかの関係があるのかも知れませんという感じでしょうか?
横川: 好きなギターやアンプのブランドを教えて。ちなみに、私はマーティンのボディの小さいものとか、ハイワットの小さいアンプとか好きでした。
永田: 元々このブランドが好きで!というのは無いのですが、今までギターに関して言えば全部見た目で買っていますね。ルックスが好きかどうか。見た目かっこ悪い楽器からかっこいい音出るとは思えないので。格好良ければ見ていて弾きたくなりますし。長年Gretchのsilver jet をメインで使っていましたけど、ここ最近はヴィンテージの Guild の Starfire III をメインで使っています。たまたま入った中古楽器屋で見つけて試奏してみたらもうこれ買うしか無いなと。全然その時ギターが欲しかった訳では無いんですけど良い買い物しました。音が気持ち良いのと何と言っても軽い。最近は見た目に加えて楽器が軽いというのも重要な判断基準になってきました。
アコギは基本ギブソン。
アンプはgroove tube のSOUL O75 っていうのを所有しています。むかし一時期真空管に凝って、ヴィンテージの管とかに色々変えて音を作ったりしていました。でも最近はもっぱらプラグインのアンプシュミレーターです。いろいろな意味で優秀なのが増えました。IK multimediaのAmpliTubeを使うことが多いです。
横川: アコギは、ギブソンかマーティンかで派閥が分かれるよね。ギブソンは音は好きなんだけど、ネックが太くて弾いてると疲れちゃうからなあ。
永田: そうですかね?マーチンのギターでも疲れちゃうやつありますよ笑いずれにせよ、鳴らないアコギはとにかく疲れますよね。
横川: 西海岸のトミー・ゲレロとかはどう?
永田: トミーゲレロは勿論聴いてきたし好きではあるんですけど、ああいう感じのギターインストで自分の作品を作るのは今のところ考えていないですね。ある程度結果が分かってしまうので。
横川: 1曲めの松前くんとの繋がりが、最初からそのつもりで作ったのではと思うくらいスムーズなのが面白い。
永田: これは本当に偶然ですよね。まあたまたま2人ともボコーダー使っていたというのが大きいと思うのですが、松前さんの曲と親和性がここまであって繋がったというのが自分でも意外ではありましたが、今回の松前さんの曲とても良かったので嬉しかったです。
まあトレイラーのガクさんの繋ぎを聴くと案外繋がり全部良いんですよね。ガクさん流石というところ。
横川: 永田くんのアーチストのところは、もっと掘りたいですね。ボーカルにも、興味あり。
永田: ま、そこの部分は結構のらりくらりやってきたのでやっぱりどこかで形には残さないとという意識はどこかにはあります。
横川: いい曲だなあ。やっぱ、友達だよね。いや、猫かなあ。
辻林: 歌を歌ってくれたやぎぬまかなさんとは3年半ルームシェアしたのですが、最初はお互いのパンツを干すことすら恥ずかしがっていたのに、最終的には「マッパで失礼します!」と裸でリビングに行ったりしていました(やぎさんの名誉のために、マッパ移動をしていたのは私だけだったということにしておきます)。
2年前のコロナ直前に、確定申告合宿の会場として2人でハワイアンズに行ったのですがそれがめちゃくちゃ楽しくて、確定申告は毎年ハワイアンズでやろう!と言っていたのですが、去年は叶わず。今年こそは行きたい。そんな強い思いを込めて、今回の歌唱のギャラは「ハワイアンズ宿泊代」を持つことで合意となりました。
横川: ミュージカルも好きなのかしら。「シェルブールの雨傘」とか。「マリッジ・ストーリー」の最後でアダム・ドライバーが歌うシーンは感動したなあ・・・
辻林: どちらも観ていません…。。「シェルブールの雨傘」に関しては、ツタヤで借りたものの1週間経って観ずに返す、というのをたくさんやりました。観たことにして良いでしょうか?
幼い頃に、「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」の録画テープを何度も観ていました。あと、ディズニー作品は大体家にあったので、「メリー・ポピンズ」を気に入って観ていた記憶があります。
自分が好きなものに関連づけていろんな作品を観る、という習慣がなかったので、「16 Going On 17」は缶コーヒのBOSSのラテラテのCMに使われて大好きだったけどそれが「サウンド・オブ・ミュージック」の曲と知るのに時間が掛かりましたし、一度「これがあの曲か!」となってもすぐ忘れるので、もうダメです。
横川: メリーポピンズは、8歳くらいの時に、大好きだった叔母さん(仕事は看護婦だった)に連れて行ってもらって、最後の別れに悲しくなってしまった記憶あり。
のちにジャズのジョンコルトレーンが「チムチムチェリー」をモードジャズで演奏するのをジャズ喫茶で聞いて、なんとも割り切れない気持ちになったのでした。
辻林: メリーポピンズにそんなに素敵で切ない思い出があるなんて!
話が少しそれますが、3年前の今頃に友達とイギリス&オランダへ3週間旅行した時に、フリーマーケットでジュリーアンドリュースのレコードと、サウンドオブミュージックのレコードを1$の箱から買いました!ちょうど滞在しているときに映画館でメリーポピンズ2が上映されていて、何も聴き取れないけど観に行きました。
横川: ところで、ライブで歌うのは、好きなのかしら?
辻林: 超緊張するので、できれば歌いたくないです。2019年の暮れに、「涙」というオールナイトイベントに出た時に初めてすごく楽しいなと思えて、よし!これからライブ頑張ってみよう!と思ったらコロナが始まりました。ゴールデンボンバーの、曲の演奏を放棄して料理する、みたいなのはやってみたいです。
横川: では、これからやりたい事を教えてください。
辻林: 麻雀を役満で上がる、ビッグバンドのアレンジの勉強と実践。です!
横川: 「RGB」、しっかりと深いビートが気持ちいいけど、実機を使っただけのことがあったでしょうか?
Gak: アナログシンセとか、アナログのアウトボード関係は、電子楽器とはいえ、生楽器扱いといってもいいのかもしれません。いつでも再現可能なソフト音源を使うことが多いですが、実はハード音源で鳴らして、録音してしまった方が、それが正解ということで仕事を進めたほうが結果を得るには速い場合もあり、取り返しがつかない、という制作環境のほうが、その制作過程でミス(個人的な判断での)があったとしても、最終的には良い結果になることもあります。
今回の楽曲では、ヴァーチャル音源で完成していたパートを、せっかくなのでハードに差し替えるとどうなのかな?という興味本位で色々やってみました。アナログリズムマシーン(acidlab Miami)で録音してみるとミックスで無駄にEQやコンプで追い込まなくてもちゃんと芯が出る事を実感し、シンセは、ソフト(Prophet V3)で作った画面見ながら実機のprophet 5 rev4で再現してみると、ちゃんと同じ音がするのが、当たり前だけど面白いし、ソフトすげーなと思う反面、実機の方が出音の密度というのか、濃度というのか、ほぼ同じ音だけどその表情は変わります。それからピッチベンドの滑らかさはMidiのそれとは違うので、実機の恩恵はありました。
横川: Gakさんは、曲作る時のバランス感覚が抜群なんだけど、そこは意識してるのかしら?
Gak: どストレートな事が出来ない反動というか、既成のジャンルにどっぷりハマる物を作るのは苦手というか、どこかにズレを入れたくなるという事が言い換えるとバランス感覚という事になるのでしょうか?本人は直球投げてるつもりでも、勝手に曲がっちゃうんですかね?いや、直球を投げる気が最初からないのか。
特定のジャンルから無意識にズレる事、音楽的な慣習、癖、知識に囚われずに、別の答えを探すことは意識しないようにしながら、常に考えています。
“RGB”では、Roland TB-303という、誰がやってもアシッドハウスなジャンル感の出る機材で、その特徴を活かしながら、違うところに着地したいと、無意識に狙ったのだと思います。
横川: クラブミュージックとポップミュージックは快感の位相がちょっと違うと常々思っているのだけど、Gakさんは位置どりとか聞き手にどう説明するとか、自分なりの基準点があったりします?
Gak: 右脳が開くのがクラブミュージックで左脳が開くのがポップミュージックなんじゃないでしょうか?
予測できる音楽的な展開を裏切られるのが面白いのがクラブミュージックで、展開の巧みさを楽しむのがポップミュージックと言ってしまうとあまりにもステレオタイプな分け方になってしまいますが、両者が入り混じった表現が好きです。逆に言えば、王道の展開、音色、フレーズでグイグイ盛り上げるものは、すぐに飽きてしまいます。そういう楽曲の素晴らしさを否定する訳ではないですが、僕のやるべきことではないのかと。仮にそういう曲を作ってみても、王道に出来ないのか?
ドイツでの大きなフェスティバルで、有名なEDM系のDJのセットを観ていて、ギラギラな電子音と爆音の4つ打ちに反して、その牧歌的で単純なメロディは、なんだか中世のお祭りみたいだなあと、基本やっていることはEDMも中世のお祭りの音楽も同じなのか。音色こそ違うが、要素はとても似ている。AとB全く違うものを引き合わせて、これは同じだよね、というイリュージョンを見せる、聞かせることが、自分の手法の一つではあると思います。
横川: これから、どういう音楽を作っていこうと思ってるのかしら?
Gak: トイロのココロにも書きましたが、図形譜シリーズはまとめたいと思います。
聴くだけではなく、視覚的な要素と、楽曲の成り立ちがわかりやすい、モノ(オブジェ)としての作品作りがしたいです。
(自分の作品なので、ゲイリー芦屋との対談にしてみました)
横川: 私の曲の感想は?
ゲイリー: 一見シンプルなポリリズムのように聴こえるが多層的に異なるグルーブが積み重なっていくことで内部的なズレが次々と新しいビートを醸し出していて、しかしながらそれを敢えて前面に出さずにさらっと聴かせてともすれば気がつかれなくてもよい!とでも思われていそうな確信犯ぶりが最高です。
気になったのはビートの整合性です。打ち込みと生演奏とサンプリングのループが重なってるように思うんですが、エスニックに寄れば寄るほど個々のグルーブのノリはジャストではない「癖」とか「揺れ」が出るわけで、その個々のグルーブの「癖」をどこまで自覚的にコントロールしてるのだろう?と思いました。コントロールして計算づくで編み上げていくつもりは最初からなくて、雑にノリがずれてるものが重なっていく混沌でいいのかな。というか僕ならそうすることしかできなかったかも。
このグルーブのノリというかズレというのはすごく気にしてる部分です。納期という時間制限の中で曲を作っていく仕事をしていると、クオンタイズをかけた音楽ばかり作ることが多くてそれがどうにも自分の中で納得がいかない部分ではあります。
いや、仕事ならまだしも自分がやりたくてやってるポップスのようなものでも、一定のクリックについ束縛されてしまうのが嫌でたまらないんですよね。
ポップスをやるにしても例えばリファレンスにしてる曲のグルーブをMIDIで検知してテンポマップ化とかできないのかな?とか思っています。
なのでグルーブの癖というかズレが醸し出す独特のノリというミクロの世界が物凄く興味深いんですよ。横川さんの曲の中で各ループなりフレーズのノリのズレがさらなるミクロのグルーブを作り出しているところに惹かれます。
横川: サンキュー! リズムの整合性は、今作るものはそれしか考えていなくて、意識しているのとその時々の偶然とを織り交ぜて、その曲ならではで何回でも聴けるように作っているつもり。揺れとか5連符の重ね合わせとか、オン・ザ・トップ、ビハインド・ザ・ビート、シェイクとか全部試しつつ、いい感じで刺激的で楽しめるように、程よくラフさも残しながら、と思ってます。
ポップさは一応意識してるつもりなのだけど、部分的に現れればいいやと、オーディエンスに期待&見くびってるところがあるかも。
説明不足でありたい、謎を残したいのだけど。
ゲイリー: オーディエンスに期待するのはこのミクロの世界で起こってるグルーブのズレが醸し出す新しい律動に気がついてくれるかどうか?ってことなのでは…と思いました。それにしては敢えてそこをわかりやすくしていないところが謎を残してる部分なのかな、と。
横川: アフリカの音楽が好きで、ポップさを意識するとそこに助けを求めてしまう(簡単なコードとか、リズムが面白ければアンサンブルどうでもいいとか)。
ゲイリー: ギター?のフレーズにアフリカ的なニュアンスは顕著ですよね。というか逆にわかりやすいので、曲全体で何をやらんとしてるのかという部分が見えやすくなっていると思います。
横川: 未来の音楽、これからどうなると思う?
ゲイリー: あらゆるものが見直され再評価されながら新しい「音色」をディグってきたのが90年代から今日までの超ざっくりとした印象です。コードとかメロとか楽理的な部分は正直そんな革新的なことは起こっていないし、今後も起こらないし変わらないと思ってます。一番変わるかもしれないと思ってる部分はやはりグルーブですね。4つ打ちとか一定のBPMというものが見直されるんじゃないでしょうか?というかそこしかもう残ってないと思います。クリックなしでやる、クオンタイズしない…とかそういう次元ではなくもっとめちゃくちゃな非常識がなされるものであって欲しいと思いますね。そこは自分がこれからやりたい部分でもあるし、そうなって欲しいという期待を込めて(笑)。
横川: ゲイリーの今回の曲、それだもの! この話の続きは、ゲイリー・インタビューのところで!