Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
音楽を生業としている身として、作曲しないということ自体、パラドックスな物言いだが、ここで言う作曲とは、リズム、メロディ、ハーモニーを構築していく一般的な方法を指す。
自分の手癖や慣習から離れたい。そのために、曲づくりのきっかけを頭の中ではなく、外側に求める試みを続けている。
具体的にどういうことか?例えば、文字からメロディをつくる。これはバッハの時代から数多く使われている手法で、バッハ(BACH)だったら、シ♭ラドシという音列になる。
日本語だったら、ハニホヘトイロ(=ドレミファソラシ)に置き換えてもいい。
これと同様の手法で、Aromaというエスプレッソマシーンをテーマにした曲 では、CAFFE(ドラファファミ)という音列から曲を作りはじめ、トーストを焼きながらエスプレッソマシーンでコーヒーを抽出する環境音を録音し、そのまま楽曲の中に使用している。
イタリアで音楽業界あるある小話として、こんなのがある。
生徒「先生、売れる曲を書くにはどうすればいいんですか?」
先生「それは、シミラレソドファを使えばいい。Similare soldo fa」
Similare soldo fa
とは、Similare=Similar
soldo=money
fa=do ここではmake的な意味
つまり”パクれば儲かる”という意味になる。
文字から音名を起こすという手法で、新聞から音名を含む言葉を(Do,Re,Mi,Fa,Sol,La,Si)を片っ端から抜き出してメロディを作るとか、可能性は色々拡がる。
画像から音像へ。 図形を明確に音に変換するにはどうすればよいか、John CageのVariations IIIという曲を録音する機会があり、自分なりにこの曲の解釈をしてみた。ざっくり説明すると、42個の小さな円が印刷された透明シートをばらまいて、塊に重なったところを図形譜として読み取って演奏するという曲なのだが、出来上がった円の塊をトレースして、計測して、音程と長さを割り出してみた。
偶然出来たこの円の塊に屁理屈をつけてパズルのように読み解く。
図形先行で作曲する。
上記のケージの曲の体験を元に、シンプルでわかりやすい図形曲の例。
LCM(最小公倍数)
最初に5つの音が同時に鳴り、各円の大きさによって次に鳴るタイミングがずれていき、また5つの音が同時に鳴るのが最小公倍数の120秒後になる。各音程については現在検討中で円周の長さをHzに置き換えて、とか模索中。
円ではなく正多角形でやってみるとどうなるか。最初は図形の上に五線譜を引いてみたりして、
なんか手ぬぐいみたいで綺麗だなと思いつつも、五線譜の間隔が自分のさじ加減で変えられるので、どうも釈然としない。
ふと、これは手回しオルゴール(オルガニート)のシートにそっくりだなと思い試してみる。
30弁のオルガニートを使い、弁の上にポイントが来るように調整してみる。
音程は30音固定のものなので、任意に選ぶことは出来ないが、上下左右を逆にして差し込むと4通りの音列が可能になる。図形がメロディを生み、それを手回しで奏でる行為が楽しい。
来年は、このシリーズを作品としてまとめたいと思います。良いお年を。