Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
今年、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督が、あの永遠の名作ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」をリメイクしたものを年末に公開する、という予告編が出て話題になっています。
もともとはブロードウエイで1957年に初演された舞台ミュージカル。
これが1961年にハリウッドで映画化され、大ヒット。
日本でも「ウエストサイド物語」として公開され、大ブームとなりました。
1950年代まではMGM映画に代表されるような、ミュージカルといえば、華やか、きらびやかなレビューショーをそのまま映像にしたようなイメージでしたが、ウエストサイドはニューヨークの下町の不良少年たちの抗争劇を描いて、移民問題などもからめつつ、ダークな世界を表現して、なおかつ「ロミオとジュリエット」をベースにしたラブ・ロマンチックなミュージカルにする、という斬新な作劇が、当時としては画期的だったのでしょう。
真似した作風、影響を受けた作品も数多いと思いますが、私、そんなに詳しくないですけど、例えばマイケル・ジャクソンの有名な「BAD」なんかもその影響が強いのでしょうか。
そして劇中の楽曲をカバーしたアーティストも数多いと思いますが、よく歌われるのは、さきほどの動画、本年版のウエストサイド、そして1961年版ウエストサイドでも歌われていた、クライマックスを飾るバラードナンバー「サムウエア」
その数々のカバーの中で、もちろん、私が一番大好きなのは、元祖テクノポップバンドDEVOが、1989年にライブでカバーしたバージョンです。
これはDEVOのヒットシングル「シャウト」(1984)と「ディスコダンサー」(1989)の間に「サムウエア」を挟む形で、10分長のメドレーというか、プログレ風の大げさな組曲にしています。ライブ・コンサート全体のラストにふさわしい大作です。まあウエストサイドの原曲からは、だいぶ離れてますが!
ローリング・ストーンズの「サティスファクション」など、ロックの名曲を破壊的なアレンジで演奏して世に出たDEVOも、やっぱりミュージカルなんかにも影響受けてんだなあ、と微笑ましいですね。
話はそれますが「サムウエア」が収録されたDEVOのライブアルバム「Now It Can Be Told」は当時、日本版CD発売の際には私がライナー・ノートを担当し、邦題も「退化の改心」としましたよ! すいませんでした。アナログは海外盤のみで、2枚組の2枚目のA面で終了して、B面はメンバーのサインの刻印のみという、めずらしい盤でしたね、
余談の余談ですが、このライブは、DEVOにとってデビュー当時からライバルと言われたトーキング・ヘッズの大ヒットライブ「ストップ・メイキング・センス」(1985)を意識しまくった構成になっていて、オープニングから、バンドの初期の代表曲を、あえてヴォーカリストひとりでアコースティックで歌う、という始まりで、1曲づつメンバーが増えていって、5曲目でようやくバンドスタイルが完成する、というパクリようです。
いつか比較して聴いてみても面白かろうと思います。
その後、1997年に、今度はペット・ショップ・ボーイズが思いっきし、さらにデジタルテクノダンスな感じで「サムウエア」をカバーします。派手なアレンジです。
この時期は、やっぱりツアーの中でもクライマックスに演奏されていたようで、彼らもやっぱりミュージカルとか好きだったのかな~と、ウエストサイドの影響の大きさを感じますね。
バンドではなく二人組の彼ら、このMVの頃はナチュラルな感じのビジュアルですけど、このちょっと前の時期までは、まるでDEVOを意識していたかのようなビジュアルでもやってたんですよ。
まあ、同じ曲をカバーするくらいだから、そりゃ思考も似てるのかな? つってたら「サムウエア」をカバーした数々のアーティストがみんな同じになっちゃうか。ま、テクノの中では、つうことで。
今年これから「ウエスト・サイド・ストーリー」の映画が公開されたら、本家「サムウエア」がラジオやクラブなどでかかることも多いと思いますが、よかったら、ついでにDEVOとペット・ショップ・ボーイズも一緒にかけていただけると、たぶん、いい感じにふくらむと思います!
他にウエストサイド楽曲のいいテクノカバーがあったら教えてください!