Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
うちの作曲家、松前公高とは学生の頃からの友人である。以前はよくカセットに色んな曲を録音してもらった。友だちの間で「プログレのことは松前さんに訊け」そういう状態だった。前回書いたプログレの名店「パテ書房」は学校の近所だったので、高校卒業と同時に自然と足が遠のいてしまった。しかし、ちょうどその頃松前さんと知り合ったのだった。パテ塾から松前塾に、別な先生から指導を受けるような、勝手にそんなふうに思っていた。
「もしもし、三宅ですけど。松前くんあのね、プログレのレコード録音してほしいんだけど」「いいよ。どういうのが聴きたいの?」「なんか、ドーンと派手で大げさなやつ。バンド名とかわかんないんだけど」「わかった。適当にみつくろっておく」というような電話のあとにカセットを持って遊びに行くことにした。当時、私は駅ビルの管理事務所で働いていて。仕事終わって、ロッカーで制服を着替えている時に、そうだ、ザッパ、いっぱいあってどれがいいのかわからないからとりあえずおススメを。あと、ハットフィールドアンドノース。この2つをメモして松前宅に向かった。この2つはぜんぜん派手で大げさなやつとかじゃないけど、いろいろ聴きたかったので、松前くんのおすすめを入れてもらおう。当時は友だちだったので、「松前くん」と呼んでいた。
松前宅につく。お土産のミスタードーナツを渡し、レコードの話。「大げさなやつじゃなくてよくなったわけね。じゃあ、適当におススメいれておくよー」と松前さんはいい、レコード屋でするように、ちょっとだけかけて「こういうのはどお?」と聴かせてくれる。私はそれを聴いて、「いいね、これ!」とか「なんかちょっとちがうかなァ」とか言う。今思うとほんとエラそうで自分でもどうかと思うけど、松前さんも楽しそうにおすすめしてくれてたと思うのでよしとされたい。
そのうち、私はすることがなくなって、「ハルコはそっちでファミコンでもやってて」と言われた。私はファミコンをやったことがなかったが、テトリスがとても楽しくてやめられなくなり、隣の部屋で松前さんはひたすら、いろいろテープに録音してくれた。90分テープぎっしりにいろんな曲が入っていて、その中に入っていたものをたよりにその後レコードやCDを買いあつめた。中古レコード店で探すのが楽しくてハットフィールドアンドノース、ザッパ、ZNRとあとマフィンズを買った。
そこからン十年が経ち、ふとマフィンズが聴きたくなって、CDを探したがアルバム「185」が見つからない。
仕方なくyoutubeで「muffins」検索をしたら、山のように食べる方のマフィンの作り方動画が出てきた。食べる方のやつの方が圧倒的にメジャーなのだった。音楽の方の、MUFFINSちゃんねるとかないのか、まあないですよね。
大ざっぱに作ってもなんとかなるマフィン。アメリカのお菓子の象徴のような、中にチョコチップやm&mいれたり、デコレーションしたり派手なのがいっぱい出てきた。
動画を見ているうちになんとなくマフィンが作りたくなって、ずっとマフィンを作っている。バター50g、卵一つと小麦粉、ベーキングパウダーと砂糖。家にあるものを混ぜて型に入れ、180度のオーブンで25分くらい焼く。するとマフィンが6個出来る。最初のうちは家族も喜んでいたが、最近は誰も手を出さず、焼きたてのマフィンが食卓で冷たくなっていく。作りたい気持ち、生産ペースと消費ペースの折り合いが悪くて、在庫がダブつくようになったので、今はペースダウンせざるを得なくなった。冷凍しても自然解凍で美味しいので自分で食べている。
家族がいる場所でマフィンズ聴いてると、空気が微妙になる。聴かないでと言われるわけではないけど、なんとなくみんなで聴く音楽でもないような気が勝手にして。家に一人でいる時に大きめの音でマフィンズ聴きながら、マフィンを作るのがとっても楽しい。