Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
前回 に引き続き、制作環境がほぼソフトウエアに置き換わっても手放すことなく、なんとなく手元に残っている機材を紹介したいと思います。
YAMAHA CS01は、1982年にヤマハから発売されたアナログシンセ。前回のVSS-200同様、90年代に当時在住していたロンドンのNotting Hill GateにあるMusic Exchangeというリサイクルショップで、100ポンドほど(当時のレートは確か1ポンド=160円ぐらい)で購入しました。
小学生の頃、YMOに衝撃を受け音楽を始めた自分にとって、機材の中でもアナログシンセには特に思い入れが強く、ちなみにマイファーストシンセはRolandのSYSTEM100MのDセット。バラ売りになっているモジュールをラックに納めて、音と信号の流れを自分で決めて、パッチケーブルで接続しないと音が出せない、硬派なモジュラーシンセでした。その他に所有したことのあるアナログシンセにはSequrntial Circuits PRO-ONE、ARP Odysseyなどがありますが、現在手元に残っているのはこのCS01のみです。
CS01の一番の特徴は、ミニキーボードを採用したコンパクトな筐体に、音作りの流れのまま横一列にスライダーを並べた、シンプルな構成だと思います。先程のSYSTEM100Mとは真逆で、音作りの幅が狭いことは否めませんが、直感的に扱うことができ、知っているだけでも以前在籍していたナチュラルカラミティのギタリストの森俊二さんや、シンガーソングライターのcaravanのような、キーボーディストではないミュージシャンも気に入って購入していました。
個人的にCS01の特に気に入っている点は、その素直な出音です。リードとしても抜けが良いと思いますが、低音域にも存在感があって、立花ハジメさんのバンド「The chill」にベーシストとして参加させていただいた際、シンセベースの曲ではレコーディングでもライブでもCS01を使用しました。
当時ヤマハは、CS01と同じグレーの本体色で、ロゴのデザインも統一した「Personal Studio System」というシリーズで、カセットMTRやモニタースピーカーなどのコンシューマー向けのDTM機器をラインナップしていましたが、コンパクトで取り回しが良いため、ミキサーのMM10とアナログリズムボックスのMR10も入手し、中西俊夫氏と「TYCOON TO$H AND KUNI SUGIMOTO」という名義で「LET IT DUB」というアルバムをリリースした頃、同氏と頻繁に行っていたライブではCS01と共に使用していました。見た目の統一感もあり、キックの音の太さに定評のあるMR10は特に気に入っていたのですが、残念なことにしばらく使用していない間に故障して音が出なくなってしまいました。
その他にCS01について特筆したい点は、ブレスコントローラーを接続できることです。ブレスコントローラーは口に咥えて息でシンセの音色や音量をコントロールするもので、DX7用として所有していたこともありましたが、CS01を入手した頃には手元に残っておらず、残念ながら自分では接続したことがありませんが、中学生の頃見に行ったリターン・トゥ・フォーエバーの再結成の来日公演で、先日亡くなってしまったチックコリアがブレスコントローラーを接続したCS01を肩から下げ、客席を練り歩きながら長いソロを演奏したことは、とても印象的で忘れられません。
CS01にはスピーカーが内蔵されていることも気に入っていて、たまに引っ張り出してきて鳴らしてみたくなります。
前回のVSS-200同様コンパクトなミニキーボードであることは、偶然ではなく、住宅事情が関係していることに書き進めながら気が付いてきたのですが、ごく気軽に扱えるアナログシンセYAMAHA CS01にはやはり愛着があって、今後も手放すことはないんだろうなと思います。
興味を持っていただいた方にYOUTUBEで見つけた動画です。
ブレスコントローラーを接続したCS01の使用例
Roland SYSTEM700のVCOは三角波を元に矩形波を生成しているため、LFOとしてシーケンサーのクロックに使用し、PWMでゲートタイムを変化させると、トリガーのタイミングが狂ってしまう問題を、SYSTEM100Mのモジュラーを駆使して解決するパッチを紹介する動画です。(10回シリーズの最終回)
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