Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
こんなご時世の中、雀さんが大勢集まって、にぎやかに会食しています。
ベランダに小さなバードフィーダーを設置してみたのです。
最初は誰にも気づかれなかったのですが、やがて1羽2羽とやってきて、今では大賑わい。黙って食べることはできない性分らしく、チュンチュンいいながら、ひしめき合い、翼で小突きあったりして、大騒ぎしています。
隣の雀に突き落とされた雀は、垂直に頭から真っ逆さまに落ちていくにもかかわらず、途中で旋回してまた、すぐに垂直に上昇して元の位置に戻るのには驚愕しました。
ヘリコプターみたいな飛び方? とにかく動きがかなり速い生物ですね。
ヘリコプターというとレオナルド ダ ヴィンチを思い出しますが、これからご紹介するオペラは、その名も レオナルド ヴィンチ (1690 –1730) という作曲家の「Artaserse」。
まずはクライマックス部分の抜粋を聴いてみてください。
私はこれ、見るたびにドキドキしてしまいます。レオナルド・ダ・ヴィンチの人体図を背景に使っている美術や、黒子を舞台に登場させている能のような演出も衣装もなにもかもステキ。
そしてこのバロックオケの音色のバランス。
フォルテになったあとの静かな一瞬にこぼれるチェンバロに心が震えます。
基本にある縦ノリのビート感がある拍節の中、拍のだいぶ前から長めの前打音がかなり自由なタイミングで自由なフレーズではいってくるのが堪らない。
特にこのくらいの中ぐらいの編成でその妙味が際立つと感じます。
ところでこのヴィンチ先生、40歳で急逝されているのですが、噂によれば、“不適切な交際” 相手の夫に毒殺されたらしい。なんでもホットチョコレートにたっぷりの毒薬が仕込まれていたとかで、証拠はないが否定する材料もなし、ということでそれが定説となっています。このArtaserseは亡くなられたその悲劇のホットチョコレートの年、1730年にローマで初演。
こちらは2012年のリバイバル公演、4時間にわたる全編がアップされています。
さて、なんといっても、このオペラでは5人の超絶カウンターテナーが揃って共演。
初演当時のローマの舞台は女人禁制であり、いわゆる「カストラート」が人気を博していた時代です。映画「カストラート」は、なんとも痛々しくて見ていて辛いものがありました。あえて、それについてはここで詳しく述べませんが、現代ではその役はカウンターテナーで再現しているというわけです。
中でも、Arbace役のFranco Fagiolli の演奏は圧巻で、今までの「女役」的な、または「ボーイソプラノ」的な「ヘルマフロジット」的なカウンターテナーのイメージを覆す肉感的でパッショネイトな表現。装飾音もカデンツァも完璧で、すっかりファンになってしまいました。最高に好きなこの曲をどうぞ。
ヘンデル Lascia Ch’io Pianga
囚われの姫がその運命を嘆く歌ですが、”la liberta” と自由に焦がれて繰り返されるところにグッときてしまいます。
この曲の ヘンデル先生自筆の譜面 が出てきました。
下の数段がそうですが、こんな雑とはびっくり。定規もつかわないんですね。
私の譜面と対して変わらない、こんなもんでいいんだなって、ちょっと嬉しい気もします。
ヘンデルはこのメロディーを気に入っていて、他の曲にも使っているとのこと。
そういうのもアリなんですね。今なら”自己パクリ”とか言われそうです。
現在活躍中のカウンターテナーで、このFagiolliとは対極にあるタイプがおそらくArtaserseを演じるPhilippe Jaroussky でしょう。
彼がうたうLascia Ch’io Piangaもステキなのですが、どちらかというとフランスもののほうが、柔らかさのある声に合うようで、バロックオペラからは離れますが、このフォーレは、1st 2ndヴァイオリンを使わない繊細なオーケストレーションとともに、もうこの世のものではない超常的美しさを醸し出しています。
こんなのを発見すると、私はYou Tubeで一生終わってもいいな、とすら思ってしまいます。この美は、もう人類の宝でしょう。
バロック音楽というものは、ガチガチのファン層が厚く、近寄りがたさから敬遠してきた経緯がありますが、バロックオペラはエンターテイメントとして楽しんでも許されるように思います。
ちょっとデカダンで深刻なかんじがしない。忠実に過去を再現する枷から解き放たれれば遊び部分を作りやすい、今後期待すべきジャンルではないでしょうか?
ということで、トリは鳥に締めてもらいます。
Frank MaglioTico & the Man
このオウム、Ticoさんの歌は沢山あがっています。中でも”Stairway to Heaven”は、かなり上出来。私は疑い深いので、これは決まったフレーズを何パターンが覚えさせて組み合わせているのだろうと、検証してみましたが、そうでもなさそう。キーの違う曲にはそれに合わせて歌っています。
鳥類の可聴音域は人間に近いから、聞こえ方も近い? そうすると鳥も音程を比率として捉え、単純な比率をより好んで選択している、つまり人類とある程度、共通する音感を有しているということでしょうか。
小さな歌う恐竜。
こんなお友達がいたらいいなぁ。
やめられない、とまらない、You Tube。
皆さん、ほどほどにね。
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