Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
機材の話です。
90年代頃までは必要があって沢山の機材を所有していましたが、あまり物に執着がなく、ミニマリスト的なところがあって、その後ソフトウエアに置き換えられるものはどんどんと手放し、今ではわずかな機材しか手元に残っていません。
ただそうは言っても、なぜだか手放す気になれない機材があって、このVSS-200もそのひとつです。
VSS-200には90年代、ロンドンに住んでいた頃にNotting Hill GateにあるMusic Exchangeで出会いました。 今どうなっているかはわかりませんが、日本で言えばハードオフに近いリサイクルショップで、ジャンク寄りの商品が多いのですが、日本よりも楽器店や機材の流通が少ない当時のロンドンでは貴重な存在で、運がよければレアな掘り出し物にも巡り会えます。今では手放してしまったClavinet D6やARP odysseyもこの店で入手しました。当時近所に住んでいてお世話になっていた故中西俊夫氏も足繁く通い、色々と見つけては買い込んでいて、当時のMAJOR FORCEスタジオはレアな機材の山になっていました。
VSS-200はYAMAHAのポータサウンドシリーズに位置付けられてるのですが、8bitのサンプリング機能とFM音源が搭載されています。
同じようなものとしては、イギリスのHuddersfieldという田舎町に、この町で行われる現代音楽フェスで当時存命のストックハウゼンが自身の楽曲解説をするということで訪れた際に、道端のマーケットで見つけた、セサミストリートのキャラクターKermit the Frogが描かれたcasioの子供向けサンプラーEP-30があって、プリセットの可愛いピアノの音を市井由里さんのレコーディングで使用したりもしたのですが、こちらは手放してしまいました。ちなみにこの現代音楽フェスの時には、ちょうど出来上がったばかりのStock, Hausen & Walkman(サンプルコラージュユニット)にremixをお願いした7inchシングルを持っていて、やはり観客で来ていたビョークに手渡したり、コンサート後に直接お話しすることのできた本家ストックハウゼンにremixをお願いしてみた、というようなちょっとした武勇伝もあります。
VSS-200のサンプラーの音色は一言で言うとlo-fiなのですが、さらに音色を劣化させるFUZZボタンが搭載されていて、当時在籍していたナチュラルカラミティのレコーディングでも使用しました。
DX7で一斉を風靡したFM音源は好き嫌いが分かれると思いますが、基本的にその素直な出音が好きで、このVSS-200を音源として使うことはありませんが、複数のFM音源のプラグインを何かと多用しています。
普段、歌物はギター、インストものはキーボードを弾きながら作曲することが多いのですが、コンパクトで、49鍵あり、電源を入れれば本体のスピーカーからすぐに音がなってくれるVSS-200は便利で、いつも傍に置いてあります。
これでなければという理由は何もないのですが、何となく愛着があって、今後も手放すことはないんだろうなと思います。
興味を持っていただいた方にYOUTUBEで見つけた動画です。
サーキットベンドされたYAMAHA VSS-200