Toyroメンバーのリレー・コラムです。ぜひ、お楽しみください!(代表・横川理彦)
2020年のコロナ禍に於いても職業作曲家のライフスタイル的には大きな変化はなく、家に引き篭もってひたすら曲を作り続ける毎日だったのだが、強いて何か変化をあげるとするなら自宅のスタジオを機材周りから何から一新、グレードアップしたことくらい。
そんな引き籠り作曲家の唯一の息抜きはSpotifyのプレイリストを作ること。去年まではYouTubeでネット・サーフィンならぬ「ヨカ曲」サーフィンしていたのが今年からはSpotifyに全面的に移行。『ネット上にある情報だけが全てではない』のは当然だが、逆にネット上にあるもの全てを知っている訳でもない。そんな知らなかった曲たちへのアクセスがサブスクによって圧倒的に時間短縮&拡大したのがこの1年だった。
曲作りに煮詰まるとSpotify立ち上げて「ヨカ曲」サーフィンで逃避、あっという間に時間が溶ける溶ける...。お風呂の中にまでタブレット持ち込んではプレイリスト作り。誰かに聴いてもらうためではなく、「ヨカ曲探しの旅の備忘録」としてあとで自分で確認するために作ってるのだ。
そんな日々の選曲の中で、2020年リリースされた音源を中心に繰り返し聴いて自分の音楽の血肉になった曲の中から一掴み今の気分でセレクト(アルバム単位での紹介ではなく、曲単位での選曲リストになります)。
1.Speedcrank/Squarepusher
2.I love Louis Cole/Thunder Cat
3.Un Caïd/Aksak Maboul
4.Pelas Aguas/Antonio Loureiro
5.FREEPORT/Ludwig Gransson
6.Trepa Trepa/Thiago Nassif
7.Fear/Snorri Hallgrimsson
8.Vacation/林以樂
9.Drop and Pierce/Marker Starling
10.タイムズスクエアのガールズバンド/無果汁団
11.Serenata Oiwa Lara/Diskoria feat.Dian Sastrowardoyo
12.SOUL LADY/YUKIKA
13.Striking gold/竹内アンナ
14.Dança/ALEXANDRE ANDRES & ANDRE MEHMARI & BERNARDO MARANHAO
(1)結局2020年で一番聴いた新譜はスクエア・プッシャーの新作だった かもしれない。ドリルンベースは下半身にズンズン響くので、たまたま電車で移動中にこれを聴いていたら突然便意を催してトラック野郎の桃次郎か「クレージーだよ奇想天外」の内田裕也状態、もしくは「イヤハヤ南(以下略 (2)サンダーキャット4枚目最新作からはこの曲が一番のお気に入り。(3)アクサク・マブールの40年ぶりの新作からは最もアクサクっぽくないこの曲を。そこはかとなくRascal Reporters感も漂う。(4)微妙に旧譜だがミナス系SSW、アントニオ・ロウレイロの2018年作『Só』収録のこの曲もよく聴いた1曲。(5)映画音楽からも1枚、1回見ただけでは何がなんだか...の「TENET」のLudwig Goranssonによるサントラ、特にこの曲のシンセの音作りに痺れる。(6)もう1枚ブラジルもの、チアゴ・ナシーフの新作『Mente』から。アート・リンゼイとの共同プロデュースによる本作の中でこの曲の、壊れる一歩手前のようなグリッチっぽいリズムが織りなす繊細なファンクに魅了された。(7)自分の仕事に直結してるところでは今年もポスト・クラシカル系の作曲家はよく聴いた。結局のところSpitfire Audioはポスト・クラシカルな劇伴作家のサポート・音源提供にその存在意義があるのかも。(8)春に大滝さんの「夢で逢えたら」の中国語カバーを一緒に制作した台湾のSSW、林以樂さん。今年リリースされるであろう新曲もなんだか凄そうな予感しかない。(9)カナダのSSW、Marker Starlingのソフトロッキンでちょいプリファブ風味もある新作から。ヨカ曲多くて選曲迷いどころだが今の気分的にこの曲を。プロデュースはショーン・オヘイガン。(10)元・Blue Marbleのお二人が新たなボーカリストを加え無果汁団となってリリースした待望のデビューアルバム。配信待てずにCDで即買い。歌詞カードに全曲の架空の短冊CDジャケがデザインされていて素敵だ。(11)インドネシアのDJデュオDiskoria がDian Sastrowardoyoをボーカルに迎えて制作したインドネシア産最高シティ・ポップ、メロディ・アレンジのクオリティの高さに打ちのめされる。インドネシアといえばDoja Catの竹内まりやインスパイアの「Say So」をわざわざ日本語でカバーしたRainychも大注目だった。(12)かつての日本のシティ・ポップが世界を席巻してる中、特に韓国のシティ・ポップ・フォロワーは層が厚い。その中でも究極の1曲とも言えるのがYUKIKAのこの曲。ミックスのリファレンス用にCDも購入したのだが、付録満載の豪華装丁で目にも楽しい1枚。(13)今泉力哉監督が2話監督されてる「有村架純の撮休」の主題歌だった曲が気になってアルバムを聴いて腰抜かした。作詞・作曲はもとより編曲、演奏、ボーカル、ミックス...何もかもが最高!一瞬の隙も破綻もない徹底した完成品を聴ける喜び。ヨカ曲多すぎて迷いに迷ってこれを。(14)こちらも18年の旧譜だがよく聴いていた1曲。ネオミナス系のSSW、アレシャンドリ・アンドレスとピアニスト・作曲家のアンドレ・メマーリ、そして作詞家ベルナルド・マラニャォンによるコラボ作品。