「東京トラッド」から26年を経て、2021年10月6日発売!
「26年ぶりのアルバム」と書くと、例えば、26歳の人やそれ以下の年の人にはとても遠い日々に思えるでしょう。だけど、私の26年なんてあっという間で、その間、テレビやラジオCM、子供用教材や番組など、数えたことはありませんが、数百の曲を書いてきました。仮歌を歌うにしても、声が衰えたな、と思ってみたり、徹夜で仕事する元気も無くなったな、とも感じますが、曲を書く能力はまだ発展途上です。どう発表するかは不明ですが、生きている限り、曲を書いていきます。
あらきなおみ
デジタル・パフォーマーのファイル作成日が語るように、2019年の7月に作り始めた曲。July_2019という曲名のまま、TOYRO MUSICの谷口尚久に編曲を依頼したのが2020年2月。楽譜に、「すわる」という仮タイトルを書いたところ、それを見た彼が「ゲシュタルト崩壊だ」と言って、「Suwaru」と名付けてくれました。谷口くんのスタジオ、Wafers Studio で全面的に録音。
この曲の一番最後の音を音量上げて聴いてみてください。全員同時録音だった現場で、「ギターの加藤さんが曲終わりになんかスゲーかっこいい音出してる」と、プレイバックすると、「俺じゃない。ヘリコプターだよ」とのお話。窓から外を眺めて演奏できるステキなスタジオで、完全防音のブースと、そうじゃないブースに分かれての録音。ちょうど曲の終わりにヘリコプターが飛んできて、「ドドドドド」という低音が加藤崇之さんの演奏する部屋に響いたんでした。
シジジーズ の冷水ひとみとの出会いは、六本木インクスティック?それとも、西荻ワッツや、新宿のジャムだった?当時、シジジーズで今堀恒雄がギターを弾いている時もあり、一度「あらきん、ベース弾かない?」と声をかけてくださったのを冷水さんは覚えているでしょうか?もりばやしみほに誘われてハイポジに参加することになっていた私は、せっかくのお誘いをありがたくもお断りしたんでした。今回、編曲を担当した冷水さんは、コロナ禍による世界中の人達の引きこもりをフルに生かし、ポルトガルの弦楽器奏者 Ruben Monteiro やイスラエルの打楽器奏者をオンラインセッションで雇いました。ミックス終了後には、私がポルトガルの酒場でこの歌を歌っている場面を想像したそうです。
今回、「この歌」のメロディを作るのに何か月もかけました。変拍子がかっこいいからやっているのではなく、「最もこの歌詞が自然に聞こえる拍子に」と簡単なドラムとベースを打ち込み、仮歌を歌い、次の日に聴き直し、全く違和感なく自然に聞こえるまで何度でも拍子を変えていきました。何ヶ月かその作業を繰り返し、ついに「この歌詞に対して最も自然なメロディと拍子」を見つけたと思いました。難点は、歌ってみるととても難しいことです。
かつて、So-netのストーリーゲートという、オリジナル絵本を観覧できるサイトがあり、そこで、5作ほど自分の絵と音楽を発表していました。今回、1964では、その中の1曲を横川理彦の編曲でアルバムに加えることにしました。デイヴィッド・アッテンボローの貴重な写真満載の本「植物の私生活」を読んで感銘を受け、種の保存のための過酷且つ本能的な植物の生態への驚きと畏敬の念を歌いました。横川さんと共演させていただくのは、「ハレはれナイト」以来。その時は、もすけさんの「家族旅行」という曲で、横川さんはウクレレ、私はベースを弾きました。
昨2020年の夏、すでに出来ていた「Suwaru」と「遠い日」のラフミックスを聴かせてもらってそのクオリティに驚き、他の曲のアレンジャーを一緒に考えていきました。信頼できる音楽家を選んだだけで、出来上がりはお任せだったのだけれど、みんな面白いし全体のバランスも程よいバリエーションがあって、歌が魅力的な良い作品に仕上がったと思う。ぜひ、たくさんの人に聴いて欲しいと願っています。
『1964』トレーラー
『遠い日』MV
みなさまからコメントいただきました。(敬称略)
初めてあらきんの声を聞いた時は衝撃だった
まだ若かったのに 人生のすいも甘いも全部知ってるような声
すでに会った時から完成してた
歌を歌うべき人って こんなだなぁと思った
いつも憧れの存在だったあらきん
やっぱかっこいい!!
あらきなおみ26年ぶりのソロアルバムは、苦難を乗り越えてきた大人のための選曲だ。文学的でもあり、哲学的。純粋に生き、大人になったアーティストの歌は、心にしみる。
横森理香(作家)暗闇の中に浮かび上がる魂の光のような楽曲集。26年ぶりの新譜にはそれ相応の年輪が刻まれ、これまでの生き様と今の在り方が投影されている。同級生だったバラキ(多摩美時代の呼び名)の存在がとても嬉しく思えた。
野村辰寿(アニメーション作家)演奏家がリラックスして楽しんでいるから歌が自由なんだなと思いました。
集まれるメンバーがいるって、とてもうらやましいなと思います。
「静かな生活」、アブストラクトでストレンジでかっこいいです!「この歌」の伸びやかな雰囲気、「遠い日」の柔らかな歌詞も好きです。さまざまなタイプの曲を歌いこなすあらきなおみさんの歌の力強さを感じるアルバムです。
tamao ninomiyahttps://tamao-ninomiya.tumblr.com/素晴らしすぎて言葉に困ります。こんな音楽に出会えて幸せです。
佐藤優介https://twitter.com/hanitar8ここ最近聞いた中でダントツで素晴らしいです。メロディも声もオーパーツというか現代でこんなことできる人ほとんどいないんじゃないですかね。こんな素直に良いって思えるの久しぶりで嬉しいです。
横沢俊一郎https://snosango.jimdofree.com/あらきなおみ、26年ぶりのソロ・アルバムがリリースされる。
自分にとっての音楽家『あらきなおみ』は優れたベーシスト(タイム感は国内有数だと理解しています)
でもあるのと同時に、いや、それ以上に素晴らしいシンガー・ソングライターであると思っている。
ニューアルバム『1964/あらきなおみ』に収録された全6曲。
厳選されたであろうそれぞれの楽曲には、確かなる技術を持った演奏家と編曲家によって深度の深い音楽的な達成がある、多彩な音楽の豊かさを味わうことが出来る。
が、前提として素晴らしいアレンジや優れた演奏があっても「楽曲自体」の質を変えることはできない。
平凡な旋律(メロディ)はどんな和音を施して演奏をしてみても、その印象を変えることはないのである。
「私にとって曲を作ることは常に最大の喜びであり、止むことのない情熱です。」
プレスリリースであらき氏によって書かれたこの言葉は
「素晴らしい曲を書くことが出来る、その可能性を信じている」という証明でもある。
世の中には素晴らしい曲があることを、そして、
それを自分の手で生み出す可能性があることを、あらきさんは「知っている」のである。
あらきさんのファーストアルバムがリリースされていた過去、普段はあまり通うことがないライブハウスに通っていた。
あらきなおみさんのライブだけは見逃したくない、と思ったからだ。
当時から演奏される楽曲、すべてが(素晴らしい曲)で、優れた演奏家の手によってそれを目の前で聴けるからだ。
あらきなおみさんが作る楽曲には自分の中に響く「素晴らしい楽曲」の普遍的魅力があったからだ。
そこに妥協も編曲や演奏によって粉飾される曲もない。
ソングライターの情熱によって作られた比類なきメロディと歌詞と歌唱がそこにあった。
ライブではそこにあらきさんによるベースプレイ、確かな伴奏者による演奏(ピアニストは当時、鶴来正基氏)。
自分が”聞いていたい音楽”がそこにはあったのである。
26年ぶりのアルバム発売、最初はその事実に驚きながらも、聴いた後には
「あらきさんが情熱を込めて作り続けている曲は、変わらぬ音楽の価値として今も自分の中で響く」
それを改めて実感した。その実感は音楽そのものへの愛情と言い換えることも出来る本質的な感触である。
それがなくては「音楽を聴きも、作りもしていない」からだ。
ニューアルバムでその本質を久々に実感させてくれたあらきなおみさんに感謝したい。
おそらく自分以外の人にとってもその実感は通じるのではないか。
必聴のアルバムである。
宮崎貴士氏によるインタヴューの記事が公開されました。
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒。
4歳から7歳までピアノのレッスンを受け、以後独学。
幼少の頃からジャズ、ソウル、ポップスに親しみ、中学の頃から自作曲を多重録音するようになる。以後、宅録派として現在も曲を書き続けている。美術大学進学後、当時ヒットしていた「CHIC」演奏のダイアナ・ロスのアルバムに衝撃を受け、エレキベースを始める。学外でバンド活動をするうちに京浜兄弟社の人々と出会い、「もすけさん」「コンスタンス・タワーズ」にベーシストとして参加する。その頃もりばやしみほと知り合い、「ハイポジ」にも参加。
91年 東芝EMIよりデビュー。2枚のアルバムに参加したのちに脱退。92年よりソロとして活動する。当初はホーン・セクション、パーカッションとベース&ボーカルという実験的な構成でライブ活動を行っていた。95年から鶴来正基(key.) 今堀恒雄(gt.)岡部洋一(per.)の編成になり、アルバム「東京トラッド」を発表。
現在はEテレ「みんなのうた」への楽曲提供、幼児番組のための歌やTVCMなどを中心に活動。
トイロミュージック あらきなおみプロフィール
取り上げていただきました!
各種配信サイトにて配信中!
先行シングル「遠い日」9月15日より配信!
CDご購入はこちら
荒木さんの声を聞いていたら、何故か松田優作の映画が浮かんだ。かかったらカッコイイなあ。きっと優作は、いつも何かを探していて、見つからないことであの魅惑の横顔が生まれる。その魅惑が荒木さんの歌にもあるんだと思う。探しても探しても見つからない魅惑。
犬童一心(映画監督)